注目の新作ムービー
アニャ・テイラー・ジョイの活躍に瞠目
Furiosa: A Mad Max Saga
(邦題「マッドマックス:フュリオサ」)
見終わって時計を見たら、なんと2時間半も経っていた。激しいアクションの連続にぐったり気味ではあったが、長い時間飽きずに見続けられたことに驚き、アクション映画の醍醐味を堪能した快感があった。この感覚は、ブルース・リーの映画を見終わったときと似ている。
2015年に予想外の大ヒットを記録したオーストラリアのアクション映画「マッドマックス 怒りのデス・ロード」の前日譚 。ディストピアで復讐に燃える警官マックスの死闘を描いた「マッドマックス」(1979年)の4作目が「デス・ロード」。5作目となる本作はマックスから完全に離脱し、若い女性主人公フュリオサの生存と復讐に向けた闘いが描かれる。第1作目から脚本・監督を手がけてきたジョージ・ミラーによる最新作。シリーズファン待望の大作だ。
世界崩壊後、放射能に汚染されたオースラリアの砂漠地帯ウェイストランドが舞台。少女フュリオサ(アリーラ・ブラウン)は、水や資源あふれる「母なる緑の地」で育った。ある日彼女は、ディメンタス将軍(クリス・ヘムズワース)をリーダーとする「バイカー・ホード」という暴走ギャングに誘拐されてしまう。ディメンタス将軍はフュリオサに「母なる緑の地」まで案内させようとしたが、彼女は案内を拒み続けた。荒野を放浪する彼らは砂漠の地下水を支配するイモータン・ジョー将軍(ラッキー・ヒューム)が統治するシタデルに辿り着く。2人の将軍はシタデルの指導権をめぐり争い、フュリオサはジョーの手に落ちる。
シタデルでの困難を経て成長したフュリオサ(アニャ・テイラー・ジョイ)は、口のきけない少年のフリをして補給タンカー「ウォー・リグ」のメカニックとなり、リグの指揮官であるプレトリアン・ジャック(トム・バーク)の信頼を得ていくのだった。前作では片腕のリグ指揮官としてシタデルからの脱出を図るフュリオサ(シャーリーズ・セロン)が描かれたが、本作ではなぜ彼女が腕を失ったのか、どのようにしてリグ指揮官となっていくのか、彼女が目指す「緑の地」とは? など謎であった部分が描かれている。
主演を演じたテイラー・ジョイの目を見張る活躍を特筆したい。華奢な体型で、美貌の女性をエレガントに演じる印象だったが、バイクでの疾走や格闘などのスピーディーな身のこなしはアクション俳優さながら。全編を通じて30行しか台詞がなく、グリースを塗った真っ黒な顔の中の大きな瞳だけで主人公の意思を伝える凄みがあった。
アクションの白眉は、撮影に78日かけたという15分のリグ襲撃シーン。砂漠を舞台に爆風で舞い上がるオレンジ色の砂塵、追撃してくる改造バイクや改造車をジャックとフュリオサが見事な連携と素早さで撃退していく。火炎放射器やらマシンガンやらが吹き荒れ、爆破で異形なウォーボーイズたちと襲撃者たちが吹き飛び、ほとんどが実写とは思えない危険な場面が次々と畳み掛けてくる。ケガ人が出ないよう何千枚と描かれた絵コンテを元に、入念な準備と安全対策が施されていたとのことだが、その危険と表裏一体の場面を演出した監督の周到さ、綿密さに感服。次作も期待せずにはいられなかった。
最後に、グロテスクなシーンもあるのでバイオレントな映画は苦手という方にはおすすめしない。
Furiosa: A Mad Max Saga
(邦題「マッドマックス:
フュリオサ)
写真クレジット:Warner Bros. Pictures
上映時間:2時間28分
シアトル周辺ではシネコンなどで、標準、3D、IMAX、IMAX3D、4DX にて上映中。