1914年、上流家庭で育った21歳のヴェラ・ブリテイン(アリシア・ヴィキャンデル )は、女子の高等教育に否定的な父の反対を押し切って念願のオックスフォードのサマーヴィル・カレッジへ入学する。だが、その直後に第一次大戦が勃発し、恋人のロナルド(キット・ハリントン)、弟エドワード(タロン・エガートン)、幼馴染のジェフリー(ジョナサン・ベイリー) が次々と軍隊に志願。ヴェラも大学を辞め、看護師として志願して前線の病院へ。そこで多くの悲惨な負傷兵を目撃/看護し、戦争の実態を知る。そんな頃、エドワードが病院に運ばれて来た……。
ブリテイン(1893年~1970年)が書いた自伝的同名小説(邦題『青春期の遺言:1900-1925年の自伝的記録』)の映画化。オーソドックスな語り口で、戦争の衝撃と胸が張り裂ける喪失の悲しみを描いた優れた反戦映画として推薦したい。監督はTVでの経歴が長いジョン・ケント。ヴィキャンデルなど人気の高い欧州の若手俳優たちが好演している。
原作は第一次大戦後、反戦平和主義者として活動したブリテンの原点となる痛恨の体験を綴ったもので、英国では反戦文学として今も読み継がれているようだ。戦争の実態を若い女性の視点で語っており、郷静子が書いた小説『れくいえむ』を思い出した。立派な軍国少女が空襲で家族や友人たちを続けて失い、絶望と孤独の中で死を待つ姿を透明感のある筆致で書いた反戦文学の傑作で、1973年の芥川賞を受賞している。
本作でやや驚いたのは、第一次大戦の勃発で英国の上流家庭の青年たちが「戦地に行くことは名誉」と即志願をしていたこと。米がイラクに侵攻した時も、多くの若者が志願=名誉と感じて戦地に向かった。兵士として戦地に赴くことを名誉と感じる感性は、教育によって刷り込まれるものだろう。ヴェラ自身も弟の志願を支援して父を説得、この体験が彼女にとって生涯にわたる悔恨へと繋がっていく。
筆者は日本の平和憲法の下、戦争放棄を謳う日本の憲法は世界に誇るべきものと思い、戦争=悪と感じてきた。今、そんな日本が安全保障関連法案を通して大きく変わろうとしている。「国際平和支援法」など、いかにも平和貢献という羊の衣を被っているが、下に何が隠れているのか。戦争によって富を得ようとする狼の姿が見えて仕方ない。
上映時間:2時間9分。シアトルはGUILD 45TH TWIN THEATRES、MERIDIAN 16で上映中。
©Sony Picture Classics
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