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The First Monday in May

ファッションはアートか
『The First Monday in May』

©Magnolia Pictures
©Magnolia Pictures

 

毎年5月にニューヨークで開かれるメトロポリタン美術館(以下Met)コスチューム・インスティテュート(以下CI)のガラと呼ばれる特別な催し 。CIへの寄付集めを目的とした華やかなファッションの祭典で、世界の著名デザイナーが贅を尽くしたドレスをまとった女優やモデル、セレブが集まり、メディアも「世界一ゴージャスなパーティ」と大きく取り上げる。

本作は去年開催され、これまで最高の入場者数80万人を集めた『China: Through the Looking Glass(「鏡の国の中国」)』 展を記念するガラと、展示会開催に向けた8カ月に及ぶ準備の過程を追ったドキュメンタリー映画だ。

展示会は、中国をテーマとした世界のデザイナーの過去のコレクションを一堂に集め、西洋が受けた中国文化の影響をファッションの歴史を通して振り返るという企画。70年代のサンローランからシャネルやディオールなどのオートクチュール300着が集められ、Metの中国美術展示場内で仏像や壁画と共に展示された。むろん単に服を並べるわけではなく、さまざなな意匠を凝らした空間デザインの中で展示され、本作を通してその長い製作過程を知る事が出来る。ファッションに興味のある人なら必見、ない人には「フーン、なるほど」な作品かもしれない。

展示会の仕掛け人はCIのキュレーター、アンドレア・ボルトンで、静かにヴィジョンを固めていく彼を影の顔とすると、表の顔はアナ・ウィンター。映画『プラダを着た悪魔』で一躍有名になった『VOGUE』の編集長。展示会も彼女の企画であり、もっぱら人集め、金集めで烈腕をふるい、文化面で中国側との調整にあたる。芸術監督は香港の映画監督ウォン・カーウェイ。準備資金を出したのはyahoo、どうやらファッションとネットの繋がりを太くしたい狙いがあったようだ。

「ファッションはアートか」という問いかけで始まる本作。アートと金の密接な関係から紐解いてみると、ミケランジェロは教会の壁画を描き、レンブラントは裕福な人々の肖像画を描き、北斎や広重も浮世絵屋の依頼で作品を描き続けた。名画とパトロン・金は切っても切れない関係にあり、金が彼、彼女らの製作やヴィジョンを支えた側面は否定できない。莫大な金をかけて催したガラは結果的に1,250万ドルの寄付が集め大成功、まさにエビで鯛を釣った形。ファッションは歴としたアート、21世紀の芸術表現の一形態なのだと納得した。

監督は『Page One: Inside the New York Times』のアンドリュー・ロッシ。前作でも感じたが、本作でも対象に近づき過ぎて客観性に欠け、CIの宣伝映画を見ているような気にさせられた。

上映時間:1時間31分。シアトルは15日からLandmark Seven Gablesで上映中。

[新作ムービー]

土井 ゆみ
映画ライター。2013年にハワイに移住。映画館が2つしかない田舎暮らしなので、映画はオンライン視聴が多く、ありがたいような、寂しいような心境。写生グループに参加し、うねる波や大きな空と雲、雄大な山をスケッチする日々にハワイの醍醐味を味わっている。