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海街diary

海街うみまちdiary』
(英題『Our Little Sister』)

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鎌倉の古い家を舞台に、四姉妹の一年の暮らしを丁寧に描きながら、今を生きる若い女性たちが一つの家族になっていく成長の姿を追い、去年の日本アカデミー賞の最優秀作品賞、監督賞、撮影賞など四賞の他、多くの映画賞を受賞した作品。
香田家の三姉妹、幸(綾瀬はるか)、佳乃(長澤まさみ)、千佳( 夏帆)の元に、異母妹すず(広瀬すず)がやってきた。すずは、14年前に家を出て以来音信不通だった父が再婚した女性との間に生まれた子。父が逝き、すでに母も亡くなっていたすずに「鎌倉に来て一緒に暮らさないか」と声をかけたのは長女の幸だった。
父の出奔後、母(大竹しのぶ)も三姉妹を置いて再婚。若い頃から母代わりをしてきたしっかり者の長女。そんな姉がやや煙たい男運の悪い次女と、のんびり屋の三女。そんな三姉妹の暮らしに温かく迎えられたすずが、異母姉らの気遣いと優しさに包まれて、少しづつ自分らしさを取り戻していく。
すずに香田家名物の「しらす丼」を食べさせ、彼女の反応を待つ三姉妹。何気ない日常の描写に若い女性らしい繊細な思いやりが描き出され、心地良い。反面、姉妹だからこその遠慮のない物言いもリアルで、姉妹を持つありがたさと厄介さがよく描き出されていた。
監督は『そして、父になる』などカンヌ映画祭常連の是枝裕和。自身のオリジナル脚本で撮ることの多い是枝だが、本作は吉田秋生の同名漫画に強く惹かれて監督が脚本を書き、映画化された。
是枝作品にはしばしば不在の者が登場する。デビュー作『幻の光』の夫、『歩いても…』の長男、そして本作の父。彼らの記憶を持ちつづける人々が作品の中心となり物語は語られる。幸は父の記憶と、その父を失った悲しみを分かちあえるすずと暮らそうと思い、すずを鎌倉に来るよう誘ったのだろう。気丈な頑張り屋、二人は驚くほどよく似ていた。ホームドラマの外見を通して、覗かせてくれた世界は深く、また爽やかでもあった。
春爛漫の桜、夏の花火など、海街鎌倉を瑞々しく捉えた瀧本幹也撮影監督の映像も素晴らしく、ぜひ劇場で堪能してほしい。

上映時間:2時間6分。シアトルは8月12日からSeven Gables Theatreで上映開始予定。

[新作ムービー]

土井 ゆみ
映画ライター。2013年にハワイに移住。映画館が2つしかない田舎暮らしなので、映画はオンライン視聴が多く、ありがたいような、寂しいような心境。写生グループに参加し、うねる波や大きな空と雲、雄大な山をスケッチする日々にハワイの醍醐味を味わっている。