5人に1人が1世移民のカナダ。トロント、バンクーバー、モントリオールでは、なんと全人口の80.9%を占める(2011年加統計局調べ)。移住して5年経つが、付き合う人たちはほぼ1世移民だ。
1974年にアメリカに渡り、ずいぶん視野が広がったと思っていたが、カナダに移って自分はまだまだであったと悟る。シアトルで接する海外生まれの住人は、在外邦人以外にあまりなかった。しかし、バンクーバーではいろんな移民たちと交流する機会がある。最初に住んだホワイトロックでの家主夫婦は、とても親切なウクライナとクロアチアからの移民だった。やがてバンクーバーに引っ越すと、わが相棒、韓国系移民1世のジェームズを通じて、多くの韓国系移民と出会った。若者が年輩に敬意を払うという習慣は、韓国系レストランの若いサーバーの接客にまで見られる。韓国系移民数人で会食すると、最年長者が箸を持つまで誰も食べ始めない。
社交ダンスを始めたおかげで中華系移民とも交流がある。台湾系高年男性のJは、話し方が穏やかでフレンドリー。何でもそつなくこなす。香港系の中高年夫婦のKとGは、英語が流暢でマナーも国際的。食事に呼ばれたらお返しをしっかり返したがる。最近会った上海からの男女グループは、服装やマナーがとても洗練されていて驚いた。同じ中華系でも、南アフリカ出身の2児の父親Bや、ニューヨーク生まれの独身女性Nは、前述の中華系移民とは雰囲気が異なる。アジア系の外見を持つが、中華系としてのバックグラウンドは薄くなっているようだ。英語が母語で中国語は話せない。そんな彼ら同士で一緒にいる印象がある。
60歳手前のイラン系移民Aはイラン人の伝統か、自分が数字に強いことを自慢し、家では北米のそれよりニュートラルだとロシア発の国際TVニュースを見る。テーブルにはいつもナッツが置かれ、訪れると食事を作ってもてなしてくれる。バンクーバーのあるブリティッシュ・コロンビア州には英国系移民も多い。どこか気取っているように感じるのは、私がブリティッシュ・アクセントに慣れていないからだろうか。一方、イタリア系男性Fは着こなしがダンディーで都会的。ノリが良く会話が弾むが、長くは続かない。
出身国での習慣そのままで暮らす当地の移民たち。以上の例は、あくまで個人的経験に基づく。人は誰しも少なからず偏見を持つものだが、カナダに住むにはそれをなくしていく必要があると感じている。人と会う時は先入観をどこかにしまって、白紙状態にしてかかるのも一案か。カナダに住み始めて、これまでの偏見やステレオタイプが徐々に薄れているなぁと思うこの頃である。