バンクーバーから「スノーバード」になって米国南部で冬を過ごす友人から誘われ、2月末、わが友ジェームズとアリゾナ州フェニックスに飛び、さらにユタ、ネバダと3州12日間の旅に出た。うっかりしてグランド・キャニオンこそ見逃したが、観光に加え、ピックルボールの「道場破り」を満喫。ワシントン州ベインブリッジ島生まれのこのスポーツは北米その他で人気が急上昇しており、同3州でもシニア層を狙ってか、この10年間に至る所でコートができている。
まずはフェニックス近くのスコッツデールで、フランク・ロイド・ライトの事務所兼住宅が保存される博物館兼学校を見学。東京帝国ホテル設計のために日本を何度も訪れ、日本から影響を受けたとされる近代建築の巨匠は、ここで冬を過ごした。独特の水平で低い屋根、幾何学的な装飾、流れるような空間構成が美しい。ダウンタウンにはソルト川を挟んでレストランやギャラリーが並び、深夜までにぎわう。
4泊後、レンタカーで2時間半北上しセドナへ移動。エキゾチックな山々が目前に迫り、不思議な雰囲気がして思わず「うわーっ」。砂漠なのに緑の草花が地面を柔らかく包み、赤土の断層が水平に走る山崖や、数本の手指のように天空に突出した山頂に囲まれ、「スピリチュアル」と言われるゆえんが理解できる。地球の磁気が集まるという「ボルテックス」目当ての観光客も多い。
2泊してさらに3時間半北上し、赤い壁が幻想的なアンテロープ・キャニオンへ。先住民族の若いツアー・ガイドが器用に日本語や韓国語で話しかけてきて、シャッター・チャンスも教えてくれる。普段と全く違った別世界で1時間半を過ごす。
小さな町で2泊して、ここから北東に2時間半ドライブすると、ザイオン国立公園。全長24キロ、深さ800メートルのザイオン渓谷に到着する。ビジター・センターから無料バスに乗り、片道45分。途中数カ所で乗下車し、ハイキングや写真撮影を楽しむ。大自然がそのまま保護され、まさに「命の洗濯」ができそう。公園西側にはホテルやレストランも多い。
1泊後に南東へ1時間半、毎年7,000人が集う各種スポーツの世界大会「ハンツマン・ワールド・シニア・ゲームズ」で有名なユタ州セントジョージへ。種目のひとつ、ピックルボールの専用公立コートを訪ねる。地元プレーヤーに混じって「わくわく」プレー。住民の7割以上がモルモン信者というセントジョージは、住宅価格が安いからか北から移住するシニアが多い。
翌日は最終目的地のラスベガスに移って、シルク・ドゥ・ソレイユによる「Kà」を鑑賞。一時、舞台が垂直になり、20人ものダンサーが細いロープで吊られながら、あたかも地平面を歩くように自由に動き回るのを見て、開いた口が塞がらない。旅のフィナーレを飾るにふさわしい夜となった。