シニアがなんだ!カナダで再出発
在シアトル日本国総領事館に現地職員として39年間勤務した後に、2013年定年退職した武田 彰さんが綴るハッピー・シニアライフ。国境を超えるものの、シアトルに隣接する都市であるカナダのバンクーバーB.C.で過ごす海外リタイアメント生活を、お伝えしていきます。
ノース・バンクーバーの魅力
~リン渓谷とディープ・コーブ~
40、50代は山歩きが趣味だった。アメリカを縦断するパシフィック・クレスト・トレイルのノース・カスケードからカナダのマニング・パークまでの107キロを、35パウンドのバックパックを背負い、5日間で歩いたことも。ある地点からはエネルギーが湧いてユーフォリア(多幸感)で満たされ、「100歳になっても歩くぞ」と信じられた。冬はクロスカントリー。ノルディック・スキーやスノー・シューを楽しんだ。
ところが今はどうだ。元来、楽な方向になびく癖があるが、今は食べることで忙しい。毎日、外食1回は当たり前で、旅に出かけてもレストランやカフェを訪ねるのが第一。山からはすっかり足が遠のき、趣味のピックルボールに、当地一の専用公営コートがあるノース・バンクーバーまで連日通う。おかげでノースショアと呼ばれる一帯に詳しくなった。
よく出かけるのは、バンクーバーのダウンタウンから約16キロに位置するノース・バンクーバーのリン・キャニオン公園。ここには、有名なキャピラノつり橋に似た橋がある。キャピラノだと窓口販売で一般65.95カナダドルと、特に家族連れは懐が痛むが、この公園は公営なので無料。巨木の間にいくつものトレイルや滝が見られ、一周3キロのライス湖に沿った遊歩道など、気軽にハイキングや森林浴が満喫できる。入り口には斬新なデザインのリン・キャニオン・カフェも。ギフトショップを併設するエコロジー・センターは、子ども向けの展示物ほか、地域の野生動物や環境、歴史などを紹介するコーナーが充実する。ここで知識を入れておくと森の散歩がもっと有意義に。
リン渓谷をさらに東に行くと、チャーミングなディープ・コーブへ。バンクーバーのダウンタウンからはセカンド・ナローズ・レイル橋を通り13キロほどだ。ホースシュー・ベイにつながる全長48キロのバーデン・パウエル・トレイルの終着点でもある。魅力は何と言っても、入り江の景色。海からそびえ立つ山々、湾に向かって突き出る桟橋、美しい海に浮かぶ大小のヨットと、心休まる完璧な情景が広がる。
癒されたあとに出向くのは、アームズ・リーチ・ビストロとハニー・ドーナツ・アンド・グディーズ。どちらも開店前から行列ができる繁盛ぶりだ。ビストロは海辺に近く、最近はパティオが拡張され、眺めも素晴らしい。当地を代表するシーフードも豊富。一方のドーナツ店は良い意味でごちゃごちゃした壁の装飾が歴史を物語り、客を引き付ける。1996年から地元で人気を博すだけあり、ドーナツは伝統的でもひと味違う。
パンデミックを経て飛行機に乗る旅がかったるくなった。近場でお気に入りの場所をもっと探したくなるこの頃である。