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第45回シアトル国際映画祭が閉幕 クロージング・ナイト・ガラに行ってきた!

5月16日より3週間にわたって開催されたシアトル国際映画祭。今年も大盛況のうちに幕を閉じました。メイン会場のひとつである、キャピトルヒルのSIFFシネマ・エジプシャン・シアターにて6月9日に行われたクロージング・ナイト・ガラの様子をレポートします。

(取材・文:加藤 瞳)

 

▲SIFFメイン会場であるシネマエジプシャンシアターは元はフリーメイソンの寺院として1915年に建てられた歴史的建造物でもある雰囲気を楽しむだけでも行ってみる価値アリ

なんと86カ国から410作品が参加した今年の映画祭。このビッグ・イベントの最後を見逃すまいと多くの映画ファンが詰め掛けた。クロージングを飾ったのは中国系アメリカ人監督、ルル・ウォン氏による「ザ・フェアウェル」。監督自身がモデルとなった主人公のビリは、昨年「クレイジー・リッチ」に出演し話題となった、ラップ・アーティストのオークワフィナが好演した。

幼くして移民としてアメリカに渡ったビリ。中国に残るナイナイ(中国語で父方の「おばあちゃん」の意)とは今も大の仲良しだ。ある日、ビリはナイナイが肺がんで余命数カ月と知らされるが、すぐに顔に出てしまうからと、ナイナイに会うことを禁じられてしまう。しかし、従兄弟のハオハオの結婚式を口実に、ビリは家族に黙ってナイナイに会いに行く。

▲ウォン監督左とSIFFアーティスティックディレクターのベスバーレット氏

肉親の死という現実に対面し、中国的な家族主義とアメリカ的な個人主義の狭間で葛藤するビリ。祖父の墓参りや、中国スタイルの結婚式で困惑しながらも、明るく元気に、たくましく立ち回る姿は観客の笑いを誘った。衝撃的なエンディングには度肝を抜かれること請け合い。

上映後はウォン監督が登壇し、大喝采が送られた。「アメリカ人、中国人、両方の視点を同時に持つことで客観的に物事が見られることが自分の強み」と語るウォン氏。だからこそ、自身のルーツとなる文化の美しさをより実感できると分析した。それはまさに、この日上映された作品そのものだ。移民としての家族の絆や、離れて暮らす親戚との関係など、アメリカに住む日本人である私たちにとって、強く共感でき、また考えさせられる映画であった。全米公開は7月12日(金)を予定。ぜひ劇場で観て欲しい。

 

 

2019年SIFF各賞が発表!

ゴールデン・スペースニードル・アワード

【最優秀作品賞】
Tel Aviv on Fire
監督:サメフ・ゾアビ(ルクセンブルグ・フランス・イスラエル・ベルギー/2018)

エルサレムで暮らす30歳のパレスチナ人、サラム。人気メロドラマのインターンとして働いている。知り合いの検問所主任、アッシがドラマの大ファンである妻に尊敬されたいとドラマの脚本に関わると、サラムは出世をするが……。(全米公開:7月26日)


【最優秀ドキュメンタリー賞】
(ユース審査員特別賞ファミリー映画部門同時受賞)
We Are the Radical Monarchs
監督:リンダ・ゴールドスタイン・ノウルトン(アメリカ/2019)
カリフォルニア州オークランドで、新たなガール・スカウトが生まれた。8歳から13歳までのさまざまな人種の女子で構成された、同グループの3年間の活動を追う。多種多様に富む私たちが違いを認め合い、強く生きていくためには?



SIFF2019 オフィシャル・コンペティション

【最優秀作品賞】
House of Hummingbird
監督:ボラ・キム(韓国・アメリカ/2018)
1994年のソウルを舞台に、14歳の少女ウニの子どもから大人への成長の狭間の葛藤や孤独感を描く。主演のパク・ジフや、脇を固める役者の優れた演技と、特定の時代や文化を背景にしながら普遍性のある視点が高く評価されての受賞。


【審査員特別新人監督賞】
Long Time No Sea
監督:ツイ・ヨンフィ(台湾/2018)
美しい海に囲まれた台湾の離島、蘭嶼(らんしょ)で先住民の子どもたちが、舞踊コンクールへの出場を目指す。普段、表に出ることのないコミュニティーにスポットを当てたストーリーが評価された。

 

加藤 瞳
東京都出身。早稲田大学第一文学部卒。ニューヨーク市立大学シネマ&メディア・スタディーズ修士。2011年、元バリスタの経歴が縁でシアトルへ。北米報知社編集部員を経て、現在はフリーランスライターとして活動中。シアトルからフェリー圏内に在住。特技は編み物と社交ダンス。服と写真、コーヒー、本が好き。