3月26日、シアトル日本人バプテスト教会で、東京とニューヨークを拠点に活躍する作曲家・ピアニスト、中村天平さんによるピアノ公演を鑑賞!
大阪のターミナルビル「あべのハルカス」のテーマ音楽作曲や、東日本大震災復興支援の音楽プロジェクト「ライジングサン」などで、その名を知られる中村天平さん。ワシントン州と兵庫県の姉妹提携55周年、シアトル市と神戸市の姉妹都市提携60周年を記念して、今回のコンサートが企画された。当日は日本人を含め、たくさんの音楽好きが会場に詰めかけた。
コンサートは「夜行列車」で幕開け。ロマンチックで幻想的なメロディーに、会場は一気に引き込まれる。続いての「栄光へのファンファーレ」は、トランペットのファンファーレを思い出させるような、華やかで明るいアップテンポな1曲。朝日放送のスポーツ情報番組「東京タイマー2020」のテーマソングでもある。そのほか「龍の涙」、「戦場からの恋文」、「一期一会」などが演奏された。
中村さんの代表曲のひとつ、「火の鳥」で迎えたフィナーレでは、息もつかせぬほどの鍵盤さばきに、一同思わずスタンディング・オベーション。鍵盤の上を指がしなやかに、かつダイナミックに行き来する様は圧巻のひと言だった。その後のアンコールでは、シアトル・マリナーズに帰って来たイチロー選手を称える「エリア51」、日本の国歌「君が代」をアレンジした曲などが披露された。大胆で力強い中にも、繊細さが感じれるピアノ演奏に、会場中が酔いしれた一夜となった。
中学時代に阪神大震災で被災。高校は半年で中退した。けんかに明け暮れていた17歳が音楽の道を志し、ついに今年メジャー・デビュー10周年を迎える。6月からの全国ツアーでは、ロードトリップで47都道府県をめぐる予定だ。「その土地の人々と触れ合い、温かみを感じるのが好きなんです」
作品は全て、実体験や自分の感情から生まれたもの。生きてきた自分の人生、人々との出会いや交流、旅先で会う人と景色からイメージが湧くという。「坂が多くて、街がきれいに見える」。そんなシアトルは、好きな都市のひとつと話す中村さん。あの魂のこもった色彩豊かな演奏を思い出しては、まだ感動の余韻に浸っている。
中村天平■神戸出身。クラシックにジャズ、ロックなどジャンルを超えた独自の音楽性で、世界を股にかけて活動する。音楽専門学校から大阪芸術大学演奏学科ピアノコースに進学、同コースを首席で卒業。国際的な音楽家を目指し、2006年よりニューヨークヘ留学。2008年にEMIからCDデビュー。毎年ヨーロッパ・ツアーも行っている。http://tempei.com