おもちゃたちへ贈る最高のエール
Toy Story 4 (邦題「トイ・ストーリー4」)
ピクサー製作の大ヒット映画「トイ・ストーリー」の第4作で、本作でシリーズ最後となる。結末も気になるが、さすがに第4作で失速するのではとの心配は杞憂に終わった。上映会場は、子どもの声よりも大人の笑い声が多く聞こえる盛況ぶり。公開1週目の週末で、トップの1億2,000万ドルを売り上げる好成績を残した。
本シリーズがスタートしたのが24年前の1995年。子どもの頃に親しんだ観客の多くはもう30歳を超えているわけで、大人の笑い声に合点がいった。子ども同伴の親だけでなく、本シリーズと共に成長してきたファンも多くを占めていたに違いない。
おもちゃ仲間の誰かがいなくなって、それを仲間が力を合わせて救出、というのがシリーズの基本ストーリー。本作で失踪するのは、フォーキー(トニー・ヘイル)だ。3作目でアンディに代わってウッディ(トム・ハンクス)たちおもちゃの持ち主となったボニーが、幼稚園で先割れスプーンを使って作った人形である。ゴミ箱から拾われてきたスプーンなので、自分がおもちゃという自覚がなく、ゴミ箱を見るとうれしそうに飛び込むのが癖。深読みすれば、おもちゃとゴミの間で「揺れるアイデンティー」の持ち主という設定が面白い。
休暇で出かけたカーニバルで、逃げ出したフォーキーを助けようと外に飛び出したウッディが、かつてアンディの家にいた陶器の羊飼少女、ボー・ピープ(アニー・ポッツ)と再会し、彼女の助けを借りてフォーキー探しに奔走する。今回はスカートではなくパンツ・スタイルのボーが、カーニバルや骨董品店に迷い込んだウッディと、助けに駆け付けたバズ・ライトイヤー(ティム・アレン)らを先導して、大活躍を見せる。
カーニバルを根城とする一匹狼のボーは、喜ばせる子どものいないおもちゃは辛いという枠を突き抜け、見事に自立している。そんな凛々しいボーにウッディは心引かれ……結末を迎える。こんな終わり方もあるのか。子どものために存在してきたおもちゃたちへ贈るエールとしては、最高のエンディングと言えるだろう。
奇人変人ぞろいの異色な仲間同士が、互いに誰も排除せず仲間として助け合うのが、おもちゃ世界の大前提。同時に、いつか捨てられるという怖れやトラウマもしっかり描かれて、甘いだけじゃないおもちゃのリアリティーもある。本シリーズは、そんな難しいバランスを保ちながら、愉快でスリリングな世界を24年間も色あせることなく描き続けてきた。3Dアニメ映像も第1作とは比較にならないほど美しく洗練され、映画館の大画面で観る醍醐味も十分。スピーディーなアクションと笑いがてんこ盛りの極上アクション・コメディーとして、ファン以外の方にもおすすめしたいアニメ作品だ。
Toy Story 4
(邦題「トイ・ストーリー4」)
写真クレジット:ウォルト・ディズニー・スタジオ・モーション・ピクチャーズ
上映時間:1時間40分
シアトルではシネコンにて3D、2D両バージョンで上映中。