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パシフィック・ノースウエスト・バレエ公演 「桃太郎(MOMOTARO: The Peach Boy)」〜行ってきました

パシフィック・ノースウエスト・バレエ公演 「桃太郎(MOMOTARO: The Peach Boy)」

取材・文:フォーリー・由香

3月21日・28日の2日間、パシフィック・ノースウエスト・バレエ(PNB)は、日本の昔話「桃太郎」を題材にした新作バレエをマリオン・オリバー・マコー・ホールで上演しました。世界初演となった本作は、瀬河寛司氏が脚色を、妻のジェシカ・ラング氏が振り付けを手がけました。

© Lindsay Thomas

白桃ではなく、シアトルで一般的な黄桃だった点がユニーク

桃太郎といえば、桃から生まれた少年が、犬、猿、キジを仲間に加え、鬼ヶ島で鬼を退治する物語。日本で幼少期を過ごした人にとってはなじみ深い昔話の一つだろう。本作は近年の物語バレエに多くみられる語り手が物語を導くスタイル。舞台の左端にはかま姿の語り手が座り、「頑張って」や「行きましょう」など日本語を交えた英語の語りで進行した。

川で洗濯をしていたおばあさんのもとに、まずは横一列に並んだ12個の小さな桃、桃の衣装をまとった小さなダンサーが現れた。繊細なバレエの動きをするのだが、愛らしいその姿は日本の遊戯を思い起こさせ思わず頬が緩んだ。続いて、桃太郎の入った巨大な桃が川を滑るように登場し、「どんぶらこっこ」という語り手の言葉から懐かしいオノマトペがよみがえる。桃の中から桃太郎が大の字で飛び出し、おじいさんとおばあさんの前に登場する場面では、喜びを表現し軽やかに踊る2人に客席から大きな拍手が起こった。

© Lindsay Thomas

桃太郎といえばおなじみの童謡「桃太郎さん、桃太郎さん、お腰につけたきびだんご、一つわたしにくださいな」の一節も、動物たちにきびだんごを渡す各場面で流れ、再び懐かしい気持ちになった。

鬼退治の場面では、伸びやかな動きで踊るたくさんの鬼たちの中、かしらと思われるひときわ背の高い鬼に目が留まる。桃太郎はその鬼と対峙し、木の棒を互いに押し引きしながらくるくると回り、戦いを繰り広げる。ジャパン・クリエイティブ・アーツ/ちきり&太鼓の学校による力強い演奏も相まって、緊張感が漂う場面となっていた。鬼たちが「あきらめます! 降参します!」と叫ぶと、客席から大きな笑いが起こった。

昔話とバレエ、そして太鼓の融合は斬新だった。衣装もまた印象に残った。村人の着物には踊りやすいようスリットが入り、キジの両腕には幾重もの羽があしらわれ胴体は鮮やかな緑色。鬼の上下に分かれたわらのような衣装は動くたびにシャカシャカと独特な音を立てていた。こうした細部への工夫も、観客を物語の世界へと引き込む大きな要素となっていた。好評を博した本作は、再上演が検討されているとのこと。見逃した人は、次回ぜひ鑑賞してみてほしい。

フォーリー 由香
2023年からシアトル在住。アウトドアもインドアもいけるが、風呂なしキャンプだけは苦手。バケットリストは、象に乗ること、ノーマン・ロックウェル美術館に行くこと、モアイ像を見ることなど更新中。