国際結婚をしている人、考えている人必読!日本とは少し違うアメリカでの離婚について、経験者や専門家の声、専門機関の情報を交えてレポートします。
※以下の内容は参考情報として掲載しています。実際の国際離婚手続きは個々のケースにより異なりますので、弁護士などの専門家、または専門機関にお問い合わせください。
取材・文:小林真依子、ハーモニー・ケリー、ハントシンガー典子
恋に落ちて一生添い遂げることを誓ったはずのふたり。別れの理由は十人十色です。国際離婚を経験したシアトル在住の日本人女性3人に、出会いから離婚に至るまでを赤裸々に語ってもらいました。
国際離婚経験者のプロフィール
けろっぴさん:日米1回ずつの離婚歴。アメリカ留学時の彼氏と日本で結婚し、子を授かるが、DVが元で離婚。アメリカで子連れ再婚し、相手の浮気が原因で離婚した。
ベルさん:国際離婚歴2回。勤務先の上司だった外国籍の男性と日本で2回目の結婚。相手の浮気とDV、2年半の別居を経て、ワシントン州で離婚した。子どもあり。
みどりこさん:アメリカ留学時の彼氏と遠距離恋愛を経て結婚、渡米。精神的DVが理由で2017年にファイル(離婚申請)を決意。現在、離婚調停中。子どもあり。
「私はこうして離婚しました」
―― 相手との出会い
ベル:2度目の結婚相手は、日本で職場の上司からアタックされ、お付き合いが始まりました。彼の転勤をきっかけに同棲を始め、妊娠・結婚しました。
けろっぴ:最初の夫は、アメリカ留学中に出会いました。英会話の練習相手が欲しくて、大学でランゲージ・パートナー募集の張り紙をしたところ、彼が連絡をくれて。実は張り紙は禁止で、30分後にはゴミで回収されていたんですけれど(笑)。
編集部:運命の出会いですね!
けろっぴ:結婚は考えられず、彼に別れを告げようとしたら、この世の終わりのように悲んで……。捨て猫を見ているようで別れられませんでした。
みどりこ:私もアメリカで語学留学中に知り合いました。7年間の遠距離恋愛中、妊娠が発覚して日本で出産。結婚のため渡米しました。
―― 離婚でつらかったことは?
ベル:別居後に自分の家族が住むアメリカに引っ越したのですが、当時はお金もなく、英語もわからない。離婚の手続きも何もかも、どうしたら良いかわからない状態でした。
けろっぴ:最初の夫との間に子どもがいましたが、日本で離婚の際、相手に100%の親権を渡してしまいました。アメリカに移住して、親権を取り戻したいと思っても無理だったのですが、子どもの命が危険にさらされる事件が起こり、相手から親権を取り戻すことができました。
みどりこ:離婚が決まって、夫から生活費をもらえなくなりました。専業主婦だったのですが、仕事はすぐに見つかりません。急な環境の変化で子どもを傷けたくなかったので、子どもが学校に行っている間に勤務できる仕事を探しました。フルタイムの仕事はあきらめました。
編集部:公的サポートは受けられなかったのですか?
みどりこ:相手が高所得者に該当したため、低所得者のための公的サポートが受けられませんでした。後にサポートを受けられるようになりましたが、弁護士を雇うには足らず、初めの頃、裁判では自分が法廷に立っていました。
―― 夫のDV(ドメスティック・バイオレンス)について
ベル:実は離婚手続きをするまで、自分がDV被害者であることに気が付かなかったんです。夫の暴力も「夫婦だし、これくらいあるだろう」と思っていました。DV加害者は言葉が巧みなことが多く、外に表面化しにくい上、被害者自身もマインド・コントロールにかかってしまうので注意が必要です。
みどりこ:私は家事や育児について、まるで何もできていないかのように、きつい言葉の暴力を日々受けていました。気に入らないと身の回りの物を壊すなど、エスカレートしていきました。
編集部:精神的なDVですね。
みどりこ:アメリカでは身体的な暴力を受けていなければ正式にDVと認定されません。日記を書いておくと、裁判で証拠になります。嫌なことも月日と共に美化してしまいがちな人間の記憶はあてにできません。
―― 夫がベビーシッターと不倫
けろっぴ:2番目の夫は浮気グセが治りませんでした。彼はベビーシッターとして雇った女性と不倫していました。私が日本に里帰り中、良い雰囲気になったようです。
全員:それはひどい!
けろっぴ:彼女はオペア・プログラムで日本から来ていた住み込みのベビーシッターだったのですが、ほかの家庭でも同じように不倫をしていたことがわかりました。
編集部:浮気はほかの女性とも?
けろっぴ:私たちは仕事の時間が異なるすれ違い夫婦でした。仕事から帰宅して寝室に入ると、夫が見知らぬ女性とベッドにいた、ということもありました。彼は優しくてイケメン。女性のほうが放っておかないんです。私が仕事でいない間に、バーなどで知り合った女性を自宅に連れ込んでいたようです。女性たちも彼に妻がいると知っていたと思います。ちなみに彼は南米出身、いわゆるラテン系です。
ベル:私の夫も話し上手で料理上手、5カ国語は使っていた頭の切れる人だったのですが、2人目の子どもを妊娠してからは、浮気を繰り返すようになりました。
編集部:夫が浮気をしていると、妻はわかるものですか?
けろっぴ:行動パターンが変わります。ある日を境に残業が多くなったなど、いつもと違う行動が見られたら浮気の可能性があります。でも、アメリカは日本と違い、不倫がわかっても慰謝料をもらえるなど離婚の際に有利に働くことはありません。
ベル:行動パターン、変わりますね。嘘もつきます。嫌な予感は大抵当たります。浮気発覚後は心から謝っているように見えて「許そう」と思うのですが、心に芽生えた疑いの気持ちは消えなくて些細なことが気になり出し、今までと同じようには過ごせなくなります。
―― シアトルでの国際離婚なら、これは知っておくべき!
ベル:ワシントン州では親権に関わらず、養育費は親の両方が持つという法律があります。相手が養育費を全く支払わない場合、相手のアメリカ国内にある銀行口座に政府が取り立てをし、引き落としてくれます。アメリカでの離婚は州の法律で裁かれますが、相手が離婚の取り決めに従わなかったら国に記録が残ります。
けろっぴ:子どもや財産の絡まない単純なケースであれば、市販の離婚キットを使って自分でファイル(離婚申請)することもできます。費用を節約できますよ。
みどりこ:アメリカでの離婚は長丁場。弁護士や各専門機関のサポートが必須です。日本語を話す人を選びがちですが、ほとんどの場合、英語に不安があっても翻訳サービスを利用できます。自分に合う人を見つけて、二人三脚で離婚調停に臨みましょう。
―― つらい時期はこうして乗り越えた!
ベル:ママ友に紹介してもらった教会の牧師さんを通じて、サルベーション・アーミーを知り、そこで各種機関を紹介してもらえました。離婚からの自立に向けて少しずつ進んでいけました。
けろっぴ:クリスチャンではなかったのですが、神にもすがる思いだったので、教会に行きました。家族がアメリカにいない私には頼れる場所もない。何かあった場合、教会で子どもを守ってもらえると思いました。
みどりこ:友人にはお世話になりました。新居探しや離婚手続きで忙しくしている間、子どものケアなどを助けてもらいました。話を聞いてもらって、精神的にも救われました。
―― 結婚する前の自分に言いたい
ベル:もっと冷静に考えられれば良かった! 好きだからという理由だけで、いろいろな問題に目をつぶってしまい、気にしませんでした。むしろ恋愛相談をした友人の、「私たちカップルもそういうことがあるよ」という言葉に安心していました。
けろっぴ:結婚する前は両目を開いて、相手を見ること。交際時から何か違うと思っていましたが、情に流されてしまいました。気になる点は無視しないで、時には別れる勇気も大事。不要な恋愛は早めに見切りをつけましょう。
みどりこ:友人の言葉には耳を傾けて! 結婚前から言葉の暴力があり、友人から止められていたにもかかわらず、好きな気持ちで突っ走っていました。
―― 離婚を決意して良かった?
ベル:つらい結婚生活を振り返ると、涙があふれ、体が震えることもありました。離婚後も大変なことはありますが、今は解放されて、子どもと安心して過ごせる環境に毎日感謝しています。
けろっぴ:1回目の離婚時、自覚なしに身体的なDVを受けていて、精神的に不安定でした。そこから解放されたのは良かったと思います。2回目は、うまくいかなくて残念だったなと。イケメンは選ぶべきではありませんね。
みどりこ:よく笑い、よく眠れます(笑)。交際期間が長かったことから離婚に踏み切れずにいました。離婚を決めてから、裁判と仕事、それに子育てと大変な毎日ですが、精神的に自由になれました。今まで少しでも家事をなまけると怒られていたのですが、「完璧でない自分もまた自分の一部。それでもいい」と、自分を認めることができました。
―― 国際結婚カップルにアドバイス
ベル:別居、離婚をしてからの数年間、結婚するみんなが気の毒に見えていました(苦笑)。でも、自分がどれだけ不健康な結婚生活を送っていたのかがわかり、今は結婚する人たちを心から祝福できます。国際結婚はお互いの文化の良いところを知って、取り入れられるので、発見も多いもの。離婚ともなれば、周りからは「もう少し頑張ってみたら」という声もあるでしょう。離婚か結婚継続か、それが愛からの行動かどうかを見極めて、自分の心の声も聞きつつ、判断できるといいですね。
けろっぴ:好きだと思っている人と結婚していても、お互い違う者同士。結婚生活では、どうしてもお互いの嫌なところは出てきます。嫌な部分は結婚する前にわかっているはず。おかしいと思ったら、本当に大丈夫?と、自分に尋ねてみてください。結婚相手は運命。DVなど命にかかわる理由以外なら、「ちょっと嫌だから離婚」ではなく、どんな問題もふたりでいかに乗り越えていくかが大切。お互い人間的に成長していくのが結婚ではないでしょうか。特に国際結婚では、文化が違うからこそ知ろうとする努力をするもの。絆が深まりますよ。
みどりこ:結婚は「共同作業」。どちらか一方だけが頑張っても成り立ちません。少しでも違和感があれば、カップル・カウンセリングをおすすめします。知り合いの老夫婦もそうですが、仲が良く、特に問題がなくても、定期的にカップル・カウンセリングを受けている夫婦も少なくありません。専門家の客観的な意見を聞くことは、自分たちの夫婦関係を見直す機会になるかもしれませんね。
知っておきたい国際離婚のリアル
・DVを受けた時は?ワシントン州のサポート機関
・ハーグ条約について知りたい
・専門家に聞く離婚時の心のケア、お金は?