医療におけるロボット支援を受けた外科手術(ロボティクス)の普及には、目を見張るものがあります。有名なのはダ・ヴィンチ・サージカルシステムで、1999年に完成。2000年にアメリカ食品医薬品局(FDA)より承認され、2016年までに全世界で3,803台が導入されています。米国においては全身麻酔のロボット、遠隔診断ロボットなどが普及しつつあります。最近、ロボット支援を受けた外科手術は歯科にも確実に押し寄せようとしています。今回は、ロボットを用いた治療の現状について書きたいと思います。
インプラント手術専用ロボット
フロリダ州マイアミに拠点を置くNeocis社による歯科インプラント手術専用ロボット「Yomi」が、FDAの承認を得たと2017年3月に発表されました。インプラントは、顎骨に埋め込む人工歯根のこと。Yomiは、患者さんのCTスキャンをもとに、術者がインプラントを埋め込む際のドリルの位置、方向性、深さなどをコントロールし、術式の変更にも速やかに対応します。
このロボットを使うと、臨床手術の前にドリルがぶれないよう予め製作するサージカルガイドも必要なくなり、多数歯のインプラントがより簡素化されると注目されています。
中国でインプラント全自動手術
2017年9月に中国の西安において、歯科医師ロボットによる世界初のインプラント全自動手術が行われました。術中はスタッフが待機し、局所麻酔はロボットではなく歯科医が行いましたが、勇気ある女性患者に2本のインプラントがロボットによって埋入されたそうです。
術前のシミュレーションと比較した誤差は臨床的許容範囲とされる0.2~0.3mm以内で、手術は無事成功と判定されました。術前処置として、スタッフが患者に歯科医師ロボットの誘導装置を固定し、ロボットに適切なポジショニング・術中の動き・器具の角度や深さなどをプログラミング。その上で、ロボットの動作確認を行い、取得されたデータに基づいた微調整後、ロボットによる実際の手術へ。術中の患者の動きに合わせ、ロボットも動きを自動調整できるようです。現在、中国では年間約100万本のインプラントが埋入されている一方で、技術水準を満たした歯科医師の不足が問題視されており、その解決策として歯科医師ロボットへの期待が高まっているそうです。
まとめ
今後、ロボットを用いたインプラント手術の成績のデータ蓄積が行われ、精度、安全性が確認されていけば、歯科でも一気に普及が進むことも考えられます。設備投資、コストの面もあり、一般開業医までの普及はかなり先とは思われますが、今後の研究の進展に注目したいもの。将来は、ロボットが歯の治
療のほとんどを行い、歯科医は診断と治療方針を決めるだけという時代が来るのかもしれませんね。
[健康な歯でスマイルライフ]