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入院患者の歯磨きが肺炎の発生予防に〜健康な歯でスマイルライフ

健康な歯でスマイルライフ

日本では北海道医療大学歯学部で博士号を取得。米国でもロマリンダ大学歯学部を卒業し、2005年にPAN-PACIFIC DENTISTRY(パンパシフィック歯科医院)を開業した中出修先生に、アメリカで生活する日本人へ向けて歯や口腔について、説明していただきます。

入院患者の歯磨きが肺炎の発生予防に

これまでも本コラムで、口腔清掃は高齢者において誤嚥性肺炎の予防になることに触れてきました。しかしながら、そのデータ分析は非常に限られたものでした。最近、マサチューセッツ州のブリガム・アンド・ウィメンズ病院(Brigham and Women’ s Hospital)の研究グループが、過去の文献を検索し、入院患者の歯磨きが院内での肺炎減少につながっていると報告しました(JAMAIntern Med. 2024 Feb 1;184(2):131-142)。今回は、この研究を中心に書いていきたいと思います。

研究の目的と方法

研究の目的は、毎日の歯磨きが院内感染による肺炎の発症、集中治療室(ICU)の使用、抗生物質の利用などに関係しているかどうかを調べることでした。調査に使用したのは、PubMedを始めとする研究論文検索サイトです。

入院患者を対象に、歯磨きが治療の一環として組み込まれたグループと組み込まれなかったグループの院内での肺炎発生頻度について、2023年3月までの文献を大規模に検証しました。計15の研究トライアルが調査対象となり、総患者数は1万742人、そのうちICU患者は2,033人、非ICU患者は8,709人でした。

研究によりわかった歯磨きの効果

調査の結果、入院患者の歯磨きが、院内での肺炎リスクとICU患者の死亡率を統計学上、有意に低くしていることが明らかに。肺炎の減少は、人工呼吸器を使用する患者においても有意に見られ、人工呼吸器を使っていない患者では、有意な減少は認められませんでした。

ICU患者は歯磨きの徹底により、人工呼吸器の使用日数が減り、ICU滞在期間も少なくなっていました。一方で、非ICU患者の入院日数と抗生物質の使用において、歯磨きが影響することはありませんでした。歯磨きの頻度に関して、1日2回と3回以上で有意差は確認されていません。

まとめ

結論としては、入院患者の歯磨きの徹底によって、院内での肺炎発症を減らし、特にICUで人工呼吸器を使用している患者の致死率を下げ、人工呼吸器の使用期間を減少させ、ICU滞在日数を減らし得ることがわかりました。これらの結果は、特に免疫力の低下した入院患者だと口腔内の細菌が肺炎を誘発しやすいことを示しています。入院患者の歯磨きを推進する取り組みをさらに広げていくことが、今後の課題と言えます。

歯磨きは、健康な人にももちろん大切ですが、入院患者では重症であればあるほど命を守るくらい絶大な効果を生むようです。皆さんも知り合いや身内で入院している方には、まずは毎日の歯磨きを勧めるのが良さそうです。

福井県出身。1985 年、北海道医療大学歯学部卒業。1993年、同大で博士号を取得後、講師に就任。 2003年、ロマリンダ大学歯学部卒業。歯科医勤務を経て2005年、タコマ近郊に開業。2006年10月にサウスセンターモール近くに移転。 パンパシフィック歯科医院 Panpacific Dentistry 411 Strander Blvd. Suite 207, Tukwila, WA 98188 ☎ 253-243-7748