皆さん、電動歯ブラシにはヘッドの部分が中空(hollow)になっているものと、ヘッドが中空になっていないもの(solid)の2種類があることをご存知でしたか? 電動歯ブラシは、通常、柄の部分とヘッドと呼ばれる毛先の部分が接合する構造になっており、取り外しができます。その接合部分から先の毛先部分が空洞になっているものを中空ヘッドと言います。最近の、テキサス・ヘルスサイエンス大学歯学部ヒューストン校のドナ・ウォーレン・モリス教授(Donna Warren Morris, R.D.H., M.Ed.)らによる研究 (Journal of Dental Hygiene)では、この2種類の歯ブラシにおける細菌数を比較した興味深い結果が報告されています。今回は、この研究を中心に歯ブラシについて書いていきたいと思います。
ヘッドが中空タイプのものは要注意
モリス教授らの研究では、中空のヘッドの歯ブラシはそうでないタイプに比べ、最大で3,000倍もの微生物が増殖していることが明らかになりました。この研究から、市販の電動歯ブラシでかなりの割合を占める中空タイプの歯ブラシは、衛生面から勧められないという結論になりました。なお、手動の歯ブラシの場合は、中空タイプのものはごく稀なので心配することはなさそうです。
歯ブラシに微生物が多く残ったまま磨くと健康に良くないか?
実際にどれほど健康面に良くないかは、まだわかっていませんが、大腸がんの一因と考えられているフソバクテリウム属(Fusobacterium)や、歯周病や心臓疾患の一因と考えられているポルフィロモナス・ジンジバリス(Porphyromonas gingivalis)なども含まれているので、歯ブラシに付着する微生物数は少ないに越したことはありません。モリス教授によれば、歯ブラシを乾燥させたり、マウスウォッシュ液に20分浸すと、かなりの数の細菌を減らすことができるとのこと。また最近の電動歯ブラシでは、紫外線殺菌できるタイプのものもでています。普段の歯ブラシの保管を日当たりのいい場所にするのも一案かもしれません。
歯ブラシの毛のタイプは?
モリス教授はナイロン製のソフトなものをすすめていますが、筆者も同感です。歯ブラシが固くないと磨いた気がしないとおっしゃる方も少なくないようですが、歯周病を予防するには、歯肉と歯の境界を磨くことが重要で、歯と歯肉の境界部分に歯ブラシを長時間触れさせる必要があります。その時に固い歯ブラシを使うと、歯磨きで歯肉を痛める可能性が高く、歯肉を退縮させてしまう可能性が高いのです。歯ブラシの選択はとても重要です。かかりつけの歯科医にどのような歯ブラシがいいかアドバイスを受け、最適なものを選びたいものですね。