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歯周病で失明のリスク?~歯周病と加齢黄斑変性との関係~

これまで、このコラムを通して歯周病とさまざまな全身疾患との関係について書いてきました。歯周病と眼の関係にしても、歯周病と糖尿病の関係を書いた際に少しだけ触れています。今回は歯周病と失明のリスク、特に加齢黄斑変性という眼の疾患との関係について紹介します。

眼の黄斑とは?

黄斑(macular)とは、網膜の中心部にある黄色い部位を指します。黄色いのは、キサントフィルという色素が豊富なため。黄斑は視野の中心であり、認識としての「視覚」のほとんどをここで担っています。

加齢黄斑変性とは?

欧米では失明原因1位の疾患が、加齢黄斑変性。日本でも3位には入ります。年齢を重ねると、網膜色素上皮の下に老廃物が蓄積してきます。その結果、直接あるいは間接的に黄斑部に障害が出る病気が加齢黄斑変性です。黄斑が変化すると、物がゆがんで見える、視野の中心が暗くなる・欠ける、視力が低下するなどの症状が出ます。加齢黄斑変性は、糖尿病性網膜症と緑内障と共に、失明を引き起こす病気として注意が必要です。

歯周病と加齢黄斑変性との関係

以下のような研究から、歯周病は、加齢黄斑変性の発症を増加させ、失明のリスクを高める可能性が示されてします。

  1. 2013年の事例:30歳以上の1,751人(内訳:加齢黄斑変性の人:56人、そうでない人:1,697人)における広範囲の検索から、男性で加齢黄斑変性の人は、統計学的に歯の総数が少なく、歯槽骨の吸収が大きいと結論付け、歯周病と加齢黄斑変性の関係を示唆する研究結果を報告。
  2. 2015年の事例:米国の40歳以上の8,208人(内訳:歯周病の人:52.3%、加齢黄斑変性の人:11.45%)における広範囲の調査から、60歳以下では歯周病が加齢黄斑変性の発症と有意に相関すると報告。
  3. 2017年の事例:韓国の13,072人の40歳以上において、軽度と重度の歯周病に分けて広範囲に検索した。62歳以下で重度の歯周病の人では、歯周病が加齢黄斑変性の発症と有意に相関すると報告。
  4. 2018年の事例:歯周病の有力菌であるPG(Porphyromonas Gingivalis)という細菌をマウスの網膜に注射したところ、マウスの網膜に加齢黄斑変性が見られる変化があったと報告。またヒトの網膜色素上皮細胞を使った実験では、PGがこの細胞に感染し、細胞の特徴を変化させたと報告。

以上、歯周病が悪化すれば、高血圧、糖尿病、心筋梗塞、脳梗塞、ある種の腫瘍などの発症リスクを上げることが示唆されています。

毎日の口腔清掃と少なくとも半年に1度の歯科検診、歯のクリーニングを欠かさず、健康な歯を維持することが、全身の健康にも重要と言えそうです。

中出 修
福井県出身。1985 年、北海道医療大学歯学部卒業。1993年、同大で博士号を取得後、講師に就任。 2003年、ロマリンダ大学歯学部卒業。歯科医勤務を経て2005年、タコマ近郊に開業。2006年10月にサウスセンターモール近くに移転。 パンパシフィック歯科医院 Panpacific Dentistry 411 Strander Blvd. Suite 207, Tukwila, WA 98188 ☎ 253-243-7748