健康な歯でスマイルライフ
日本では北海道医療大学歯学部で博士号を取得。米国でもロマリンダ大学歯学部を卒業し、2005年にPAN-PACIFIC DENTISTRY(パンパシフィック歯科医院)を開業した中出修先生に、アメリカで生活する日本人へ向けて歯や口腔について、説明していただきます
歯の痛みのコントール
NIH(National Institute of Health)の報告によれば、アメリカでは、麻薬性の鎮痛剤を多く取り過ぎることにより、1日に約115人もの命が奪われており、深刻な社会問題になっています。
日本では歯科において、痛み止めに麻薬(opioid)入りの鎮痛剤を使うことは皆無と言っていいと思いますが、ここアメリカでは、比較的普通に処方されています。この違いは何かというと、痛みに対する国民性の違いに尽きると感じています。日本人は我慢強い傾向がありますからね。
そんな折、ケース・ウエスタン・リザーブ大学歯学部において、Advilの商品名で知られるイブプロフェンと、Tylenolの商品名で知られるアセトアミノフェンを併用するだけで、麻薬入り鎮痛剤よりもむしろ痛みに効果的であるとの報告がなされ、注目を浴びています。
今回は、この研究を中心に書いていきたいと思います。
歯科での麻薬中毒者の特徴
アメリカで歯科をやっていると、100%痛み止め狙いで来院する患者さんに稀に遭遇します。麻薬入り鎮痛剤をもらうためなら、痛くもないのに痛いとウソをつくのも平気ですし、場合によっては泣くこともできるようです。
われわれ歯科医院の側も患者の処方履歴を調べられますし、このような患者の特徴を把握しているので、そう簡単にはだまされないと思ってはいます。一方で、神経痛や関連痛など、歯とは一見、関係ない痛みが歯で起こることもあるので、見定めるのは容易ではありません。この辺が日本における歯科と大きく異なる点です。
彼らの特徴としては、1. 痛い痛いと強調する 2. 診療時間終了間際に電話してくる 3. 特に週末直前に電話してくる 4. 他の弱い鎮痛剤は効かない、あるいはそれにアレルギーがあると言ってくる 5. 他の医療機関にも多く受診している、などです。
今回の研究で明らかになったこと
460 以上の過去の文献を調べた結果、400mgのイブプロフェンと1,000mgのアセトアミノフェンを組み合わせて飲むと、どの麻薬入り鎮痛剤よりも痛みに効果があることが明らかになった今回の報告。麻薬入り鎮痛剤には、うつろになる、呼吸抑制、吐き気、便秘などの副作用もあり、歯科でのこれらの薬の処方は、最後の手段にすべきであると結論付けています。
まとめ
アメリカの歯科で問題となっている麻薬入り鎮痛剤。しかし、歯科の痛みの大半は、市販の薬の組み合わせでコントールできるようです。