Home 美容・健康 健康な歯でスマイルライフ 日本の銀歯の話

日本の銀歯の話

 

先日、ある日本人の方から、日本で治療した銀歯を、白いセラミックのクラウンにしたら、その後再三にわたり痛みが出て困っているという電話がありました。セカンド・オピニオンとして診療させてもらうことになったので、今回はその時の模様を中心に書いていきたいと思います。

治療の経緯

患者さんは、職場近くの個人開業歯科医に数年前から通っていました。通って間もなく、日本で作製した奥歯の銀歯を見たその歯科医から、「これはアメリカのスタンダードではないから、セラミックのクラウンに替えたほうがいい」と言われたそうです。何の問題もなかったのに、その歯科医に言われるままにセラミックのクラウンに替えたところ、クラウンを入れた直後から調子が悪く、痛みに襲われました。抗生物質を投与されるも症状は改善せず、結局、ルートキャナル(歯の神経治療)が必要と言われ、その治療を受けました。治療後、いったんは痛みが治まりましたが、その半年くらい後に再び神経を刺すような痛みに襲われ、再度受診。ルートキャナルに問題はなく、理由はよく分からないということで、抗生物質の投与を受けました。しかし、それでも症状は良くならず、困り果て、当院受診となったようです。

所見と治療の経過

セラミックのクラウンが装着され、レントゲンで診てもルートキャナル治療自体はなされていました。しかし、神経管のひとつが治療されておらず、痛みの主な原因は、治療すべき神経を除去していなかったことが原因だろうと思われました。さらに治療された神経管のひとつに、ファイルという治療器具の破片を示唆する像が認められましたが、ファイルの破損について、患者さんには一切告知されていませんでした。ルートキャナルの専門医を紹介し、治療を顕微鏡下でやり直した結果、痛みはなくなり、長かっ たその銀歯の治療がようやく完了しました。

最初の歯科医の問題点を挙げると、以下のようになります。

  • 日本の銀歯(インレー)をアメリカのスタンダードではないと決めつけ、明らかな虫歯や問題がなかったにもかかわらず、治療を始めてしまった。
  • 治療されていないルートキャナルがあったということは、レントゲンで明らか。また、ルートキャナルでの道具(ファイル)が破損したにもかかわらず、そのことを患者さんに伝えず、専門医への紹介など必要な治療を怠った。

まとめ

問題のない銀歯に手をつけたことにより、クラウン、ルートキャナル、ルートキャナルやり直しと度重なる残念な結果を招いた一例をご紹介しました。

このようにアメリカでは、日本の銀歯について時に理解を得られないことがあるかもしれません。銀歯が外れた場合など、本当はセメントで再着すれば済む治療でも、クラウンを作らなければならないと言われることも少なくないと聞きます。

日本の銀歯の再治療など治療方針に納得がいかない場合は、日本の歯科事情に詳しい歯科医院でセカンド・オピニオンを試したり、相談したりするのが良いでしょう。

[健康な歯でスマイルライフ]

中出 修
福井県出身。1985 年、北海道医療大学歯学部卒業。1993年、同大で博士号を取得後、講師に就任。 2003年、ロマリンダ大学歯学部卒業。歯科医勤務を経て2005年、タコマ近郊に開業。2006年10月にサウスセンターモール近くに移転。 パンパシフィック歯科医院 Panpacific Dentistry 411 Strander Blvd. Suite 207, Tukwila, WA 98188 ☎ 253-243-7748