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歯科治療前にマウスウォッシュで口をゆすぐ理由

健康な歯でスマイルライフ

日本では北海道医療大学歯学部で博士号を取得。米国でもロマリンダ大学歯学部を卒業し、2005年にPAN-PACIFIC DENTISTRY(パンパシフィック歯科医院)を開業した中出修先生に、アメリカで生活する日本人へ向けて歯や口腔について、説明していただきます。

歯科治療前にマウスウォッシュで口をゆすぐ理由

コロナ禍に見舞われて1年以上が経ち、アメリカではワクチン接種も確実に進んでいますが、変異ウイルスの出現もあり、終息のめどはまだ立っているとは言えません。歯科でも院内感染の防止に取り組んでいます。歯科治療前の患者さんのマウスウォッシュ使用もそのひとつに挙げられますが、ニュージャージー州立のラトガーズ大学で興味深い研究論文が発表されましたので紹介したいと思います。

マウスウォッシュの役割

パンデミック以前から、歯科治療の際に細菌、ウイルスを減らし、室内への飛散を軽減する効果が期待できるとして、歯科治療前のマウスウォッシュを推奨する歯科関係者は少なくありませんでした。とはいえ、実際には徹底されていたとは言えない状況だったのですが、それがコロナ禍をきっかけに、ほぼ全ての歯科医院で歯科治療前にマウスウォッシュを使用してもらうように変わりました。アメリカの歯科医師会でも、歯科治療前にマウスウォッシュを使うことは新型コロナウイルスを不活化するのに有効であるようだと言われたのを契機に、昨年の春頃、徹底するように通達がなされました。

ラトガーズ大学の研究 (Pathogens 2021, 10(3), 272)

ラトガーズ大学では、マウスウォッシュの主要製品である(1)リステリン、(2)コルゲートペルオキシル(1.5% オキシドール)、(3)0.12%クロルヘキシジン、(4)10%ポビドンヨード液(イソジンで知られる)を用い、それぞれの原液、段階的に薄めたものにおいて抗コロナ効果およびヒトの細胞毒性を試験管上で調べました。結果、それぞれの原液に加え、50%に薄めたリステリン、コルゲートペルオキシル、0.12%クロルヘキシジン 、および5%まで薄めた10%ポビドンヨード液も、新型コロナウイルスの感染力を完全に消滅させました

新型コロナウイルス感染対策に有効

上記の中で細胞毒性が低いのは、リステリン、0.12%クロルヘキシジン、10%ポビドンヨード液、コルゲートペルオキシルの順でした。

つまり、これら全てのマウスウォッシュは、たとえ唾液で薄められたとしても新型コロナウイルスの感染力をブロックするのに効果的ということになります。また、その中でも生体の細胞に優しいのは、リステリンとクロルヘキシジンであることが示唆されました。

まとめ

歯科治療前のマウスウォッシュの使用は、コロナ禍における歯科治療の安全性向上に寄与する可能性が高いと言えます。歯科においては、マウスウォッシュの使用含め、患者さんにマスクをして来てもらう、院内の消毒を徹底する、待合室で患者さん同士が一緒にならないようにするなどして、引き続き感染防止に努めています。

中出 修
福井県出身。1985 年、北海道医療大学歯学部卒業。1993年、同大で博士号を取得後、講師に就任。 2003年、ロマリンダ大学歯学部卒業。歯科医勤務を経て2005年、タコマ近郊に開業。2006年10月にサウスセンターモール近くに移転。 パンパシフィック歯科医院 Panpacific Dentistry 411 Strander Blvd. Suite 207, Tukwila, WA 98188 ☎ 253-243-7748