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歯を削らない治療がトレンドのひとつに

 

考えてみれば、歯科の国家試験の治療法に関する正解というのは日米問わず実にいいかげんです。日米で国家試験を受けましたが、正解が違うこともありました。歯の治療法は、料理でたとえるなら「調理法」。正しいやり方をひとつに決められるものでもありません。歯科医の数ほど治療法があると言われます。それでも受験生は正解をひとつ選ばなければならず、実に気の毒なことです。20~30年前の国家試験の正解が、今では不正解ということもあります。現に昔、教科書で習ったことが、今ではやってはいけない治療とされる場合も。現在の歯科の常識も10年、20年経てば怪しくなることでしょう。

つまり、今言われている歯科の常識も100%信じてはいけない、ということです。歯科の新製品でもダメなものは数年で淘汰され、自社の研究ではいいと主張していても、臨床成績が伴わないと歯科医から見向きもされなくなります。科学、テクノロジーの進歩、治療結果の蓄積で歯科の治療スタイルも変わります。そのような状況の中で、歯科界では歯をなるべく削らない治療に流れがシフトしてきています。今回は、ここ20年の歯科の治療法で特に大きく変わっている点について書きたいと思います。

虫歯の予防拡大という概念予防

拡大とは、虫歯の治療の際、虫歯の部分のみならず健康な部分まで削る範囲を拡大し、虫歯の再発を予防するための処置です。長年(100年くらい)この概念が教えられてきましたので、実践する歯科医も少なくないと思います。ただ、歯の削除量が多いと歯が力学的に弱くなり、後に歯が欠けたり割れたりする確率が高くなります。クラウンになり、さらに健康な歯を削ってルートキャナルになり、歯根破折を起こして抜歯、そしてインプラント、入れ歯になってしまいます。2000年頃から接着技術が急速に発達し、虫歯の部分だけを削って最小限の詰め物で、歯の強度を損なわないようにする治療が浸透してきました。

歯の神経治療

不幸にして歯の神経(歯髄)を取らなければならない場合、治療のやりやすさから、歯髄周囲の象牙質(特に上部1/3)を大きく削除して治療する方法が正しいとされてきました。昔ながらの、歯をいっぱい削る神経治療をする歯科医もまだいます。しかし、この方法では、神経治療そのものは成功しても歯根が弱くなって歯根が折れ、結局、歯を抜くことになる可能性が高いと分かってきたところです。

まとめ

歯をより削らない治療で歯の寿命を長くできます。治療しなくていいように予防することも大事。日頃の歯ブラシ、フロスを徹底し、健康に良い食事を心がけ、定期的な歯科検診、クリーニングを欠かさないようにしましょう。

[健康な歯でスマイルライフ]

中出 修
福井県出身。1985 年、北海道医療大学歯学部卒業。1993年、同大で博士号を取得後、講師に就任。 2003年、ロマリンダ大学歯学部卒業。歯科医勤務を経て2005年、タコマ近郊に開業。2006年10月にサウスセンターモール近くに移転。 パンパシフィック歯科医院 Panpacific Dentistry 411 Strander Blvd. Suite 207, Tukwila, WA 98188 ☎ 253-243-7748