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アルコールによる 口腔環境への影響とは

最近、飲酒と口腔内細菌の関係に関するニューヨーク大学の研究で、1,000人以上の55歳から87歳までの白人を対象とする調査が行われました。そして、慢性的な飲酒により、口腔内の細菌、ウイルス、微生物を含む細菌叢(さいきんそう)のバランスが崩れると、歯周病、ある種のガンおよび心疾患に関係した細菌が増加すると報告されました。過剰な飲酒が、口腔内の細菌叢に直接影響を及ぼす可能性を示したのです。これほどまでの広範囲な研究は過去に例がなく、とても注目を浴びています。

今回は飲酒と口腔内の関係について書いていきたいと思います。

飲酒と免疫の関係
ごく少量の飲酒は、血行促進およびリラックス効果で、ガン細胞を撃退してくれるナチュラルキラー(NK)細胞も活性化することが知られています。実際、ウォッカのショットを4、5杯飲んだ後、免疫機能がどうなっているかを調べた有名な研究では、飲酒20分で免疫機能を上昇させるタンパク質の濃度が上がり、NK細胞が増加することが明らかになりました。しかし、飲酒2時間および5時間後では、免疫機能を減少させるタンパク質が増え、またNK細胞の数も減っており、免疫にも悪影響が出ることがわかりました。

深酒をした後、風邪を引きやすくなったり、体調を崩したりするのは、深酒による免疫力の低下とアルコールの代謝産物で毒性のあるアセトアルデヒドなどの有害な物質が体内に増えることが原因と考えられています。

アルコール依存症者の口腔内の特徴
ごく少量の飲酒なら、口腔内に特徴が出ることはほとんどないと言えるでしょう。酒飲みのよく使う言い訳に、「口をアルコール消毒する」なんていうものもあるようですが、慢性的に酒を飲み過ぎると、口腔内にもマイナスです。免疫機能の低下、唾液分泌の低下、胃酸の逆流の増加、口腔衛生の低下、酸性で糖質を多く含む酒しか飲まないと栄養状態の悪化、口腔内細菌叢の変化、グルタルアルデヒドなどの有害代謝産物や外傷が増えるなどの特徴が出てきます。

これらのことから、 1. 虫歯の発生率が3倍になる。通常できづらい箇所にも虫歯が認められやすい 2. 前歯の損傷、口唇の傷 3. 口腔、食道ガン発生率が激増 4. プラーク、歯石の増加および歯周病の増加 5. 口臭がひどい6. 歯の着色 7. 歯の喪失および咀しゃく機能の減退 8. 酸蝕症(唾液の低下、酒の酸および胃酸逆流による) 9. 歯科の局所麻酔が効きづらい、というような歯科的特徴がアルコール依存者には認められることが多いのです。

酒は節度を守って楽しみたいものですね。深酒して歯磨きもしないでそのまま寝るなんてことがないよう、気を付けましょう。虫歯になったり、歯周病が悪化したりする可能性が高くなります。

中出 修
福井県出身。1985 年、北海道医療大学歯学部卒業。1993年、同大で博士号を取得後、講師に就任。 2003年、ロマリンダ大学歯学部卒業。歯科医勤務を経て2005年、タコマ近郊に開業。2006年10月にサウスセンターモール近くに移転。 パンパシフィック歯科医院 Panpacific Dentistry 411 Strander Blvd. Suite 207, Tukwila, WA 98188 ☎ 253-243-7748