通常、歯周病以外の歯痛の多くは深い虫歯があるか、深い詰め物や被せもの (クラウン)がある場合に起こりますが、全く思いもよらない歯に激痛が走るという経験をされた方も多いのではないでしょうか。今回は、一見して重度の歯周病や虫歯のない健康そうな歯に激痛が走る場合について述べていきたいと思います。
ケース1.歯を何かにぶつけたことがある(歯の外傷の既往)
歯に過度の外傷が加わることによって歯の神経がダメージを受けて、その後、 歯の神経が死ぬことがあります。外傷を受けてから歯の神経が死ぬまでの期間は様々で、比較的すぐに死ぬ場合もあれば何年も後に死ぬ場合もあります。時間が長くなると患者さんは外傷を受けた過去を忘れていることもあります。
歯の神経が死ぬとそこに感染が起こり、歯の痛みや歯の根元が腫れてくるといった症状を伴います。歯の神経の生死の診断は、歯髄電気診といって歯に電流を流して痛みを感じるかどうかで判定するのが一般的ですが、レントゲン写真を撮ると歯根の先に黒い影が映ることがあります。この場合、 周囲の骨にまで感染が及んで骨が溶けている場合が少なくありません。この場合、 歯の神経に感染および炎症があるので、治療法としてはルートキャナルが必要になります。
ケース2.歯の矯正治療を受けたことがある。
歯の矯正治療で歯の神経が死ぬことは多くはないのですが、ケース1と同じように矯正治療に過度に力が加わると、時間を経てから歯の神経が死んで痛みを起こすことがあります。
ケース3.噛み合わせが強すぎる(咬合性外傷)
上下の歯が一定の部位で強くぶつかり過ぎると、噛む力が集中し過ぎて歯に外傷を引き起こします。通常は冷たいものや熱いものに対する知覚過敏や咬合痛程度で済むことが多いのですが、それが長く放置されたり、極端にひどい状態になると、やはりケース1のような状況に陥り、歯の激しい痛みを引き起こすことがあります。強くぶつかっている部分を削って噛み合わせを調整すれば痛みが引く場合もありますが、すでに歯髄のダメージが大きい時はルートキャナルが必要になります。
ケース4.歯にヒビが入った
全く健康な歯にも場合によってはヒビが入り、ヒビから細菌が入って、歯髄に炎症を引き起こし、激しい痛みを引き起こすことがあります。特に歯ぎしりをする人や固い食べ物をよく食べる人によく見られます。ルートキャナルにより歯を抜かなくて済む場合もありますが、ヒビの入り方によっては抜歯しなければならないこともあります。
ケース5.関連痛によるもの
実際は、痛みの原因がその歯ではなく、頭部や心臓など身体の他の部位あるいは、全く別の歯の痛みをその歯の痛みとして感じることがあります。こうした痛みを関連痛といいます。真の原因を除くとその歯の痛みは消えていきます。
今回は、一見、健康そうな歯に激痛が走る場合についてケースごとに述べてきました。このような状況に陥った場合は、まずはかかりつけの歯科医に相談して適切な診断、処置を受けるようにしましょう。
[健康な歯でスマイルライフ]