人口の30% 以上が肥満(BMI 30 以上)と言われるアメリカ。確かにアメリカで生活していると実感しますよね。これまでこのコラムでも、肥満と歯周病の関係について書いてきました。最近のイエール大学の研究で歯科医の数が増えると肥満の割合が減る傾向にあることが報告され注目されています。日本でも最近、某テレビ番組で取り上げられ、ご覧になった方もいるかもしれません。今回はこの研究を中心に書いていきたいと思います。
肥満のもたらす負の影響
皆さんもご存知の通り、肥満は高血圧、糖尿病、動脈硬化など様々な疾患を引き起こす要因となります。アメリカでは、肥満により増加する費用(医療費、生産性の低化)は年間1,500 億ドル以上と推定されています。肥満は今後も増え続けることが予想され、2030年には、肥満の人口割合が40%を超えるのではないかとの推定もあり、アメリカにとっては頭の痛い問題となっています。
イェール大学の研究
イェール大学の公衆衛生学の研究者グループは、全米2,841の郡で成人の肥満の割合と人口1万人当たりの歯科医の数との関係を調べました。この調査では、同時に家庭医の数、ファーストフードを提供するレストランの割合や人口当たりのレクリエーション施設などの社会環境、貧困の割合、人種構成、年齢構成なども同時に調べました。その結果、人口に対して歯科医の数が多いところでは肥満の割合が減少することが明らかになり、その他の因子を考慮しても統計学に有意な結果として示されたのです。この研究では、人口1万人に対して歯科医が1人増えると肥満人口率が1%下がるとの結果が得られました。
歯科医と家庭医の数が肥満に及ぼす影響に関しては、歯科医および家庭医の数がともに多い地域の場合、肥満の割合がより低い傾向が顕著に見られ、歯科医の数が多くても家庭医の数が少ない地域では、肥満人口の割合減少は顕著ではなく、歯科医および家庭医、双方がそろった時に肥満減少効果が最も得られやすいとしています。この研究では、どうして歯科医が多い地域で肥満人口の割合が減るのか明確には分からないとしていますが、歯科医が、虫歯予防のため甘い物を控えるように患者さん(特に子ども)に指導することが、肥満減少の啓蒙活動となっている可能性を挙げています。
このような全米規模での研究は今回が初めてで、今後、歯科医が個人開業医なのか公共の医療施設に所属している歯科医なのかなど、さらに研究を発展させていく必要があるようです。日本でも同様の研究が行なわれ、歯科医の数と肥満の関係がより明らかになっていってほしいものです。
[健康な歯でスマイルライフ]