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水道水のフッ素の添加について

歯を丈夫にし、虫歯予防に有効とされるフッ素。現在ではほとんどの歯磨き剤にはもちろん、うがい薬の一部にも含まれています。しかしながら、フッ素を水道水に人工的に添加するとなると、選択の自由や健康への懸念といった理由から抵抗を示す人も少なくありません。このような状況の中で、国を挙げて水道水のフッ素化に取り組んでいるアイルランドでつい最近、興味深い研究が発表されました。今回はこの研究と水道水のフッ素化について書いていきたいと思います。

フッ素の虫歯予防における歴史
20 世紀初頭、アメリカ、コロラド州の一部地域で、斑状歯(歯に褐色の斑点ができる症状)を発症している子どもが多くいることを発見。調べてみると飲料水に高濃度(2 ~13.7p p m)のフッ素が含まれていることが分かりました。しかし、同時にその地域の子どもには虫歯が少ないことが判明。それ以降、アメリカでは水道水中フッ素濃度の低い地域と高い地域で、虫歯予防効果および健康における影響を中心とした大々的な疫学調査を推進。20 世紀半ばまでに、斑状歯の発祥が少なく虫歯の予防効果が高い、健康的に問題のない水道水のフッ素最適濃度は1p p m 程度だと確立されました。

水道水フッ素添加と世界の傾向
アメリカやオーストラリアではすでに約70 %の地域で水道水のフッ素化が行われています。水道水フッ素化に取り組む地域は毎年増加傾向にあり、それはワシントン州でも同じといえます。しかし世界的に見ると、水道水にフッ素を添加しているのは、約 24 カ国、372 万人、世界全人口の約 6 %程度に過ぎません。ちなみに日本でフッ素を水道水に添加している地域は日本全体の 1%以下で、ほぼ皆無といった状況です。

今回のアイルランドの研究
アイルランドでは、1964 年から水道水へのフッ素添加が行われてきました。国の約85 %でフッ素が添加され、残りの 15 %は個人の井戸を使っている地域なので、フッ素が添加されていません。今回、ダブリン大学トリニティカレッジ(Trinity College Dublin)の歯学部の大規模な研究で、50 歳以上の大人、約5,000人の長期に渡る追跡調査を行ったところ、水道水へのフッ素添加は、子どもを虫歯から守るだけではなく高齢者の虫歯予防にも効果があることを明らかにしました。高齢化社会を迎える多くの国で、高齢者の歯の根元の虫歯の増加が問題となっていますが、最適なフッ素濃度に調整した水道水は高齢者の虫歯予防にも寄与することが明らかになり、注目を集めています。
まだまだ論争が続く水道水のフッ素添加ですが、感情論ではなく科学的根拠に基づいた議論が望まれます。フッ素を賢く利用して、なおかつ日々の歯磨き等の手入れを怠らずに、健康な歯を維持したいものですね。

[健康な歯でスマイルライフ]

中出 修
福井県出身。1985 年、北海道医療大学歯学部卒業。1993年、同大で博士号を取得後、講師に就任。 2003年、ロマリンダ大学歯学部卒業。歯科医勤務を経て2005年、タコマ近郊に開業。2006年10月にサウスセンターモール近くに移転。 パンパシフィック歯科医院 Panpacific Dentistry 411 Strander Blvd. Suite 207, Tukwila, WA 98188 ☎ 253-243-7748