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ビフィズス菌が虫歯に関係?

健康な歯でスマイルライフ

日本では北海道医療大学歯学部で博士号を取得。米国でもロマリンダ大学歯学部を卒業し、2005年にPAN-PACIFIC DENTISTRY(パンパシフィック歯科医院)を開業した中出修先生に、アメリカで生活する日本人へ向けて歯や口腔について、説明していただきます。

ビフィズス菌が虫歯に関係?

腸内細菌の善玉菌として知られ、発酵乳製品にも広く添加されているビフィズス菌(Bifidobacterium)。最近、東北大学で、ビフィズス菌が小児の虫歯に関係するという研究成果が発表されました。今回はこの研究について書いていきたいと思います。

東北大学の研究

今年5月、東北大学歯学部の研究グループは、重度の小児う蝕(虫歯)患者から特徴的に検出されることが知られているビフィズス菌の虫歯誘発機能の一端について明らかにしました(Frontiers in Microbiology, 2020)。ビフィズス菌は主に腸内に生息し、酸性化することで良好な腸内環境を作る善玉菌として有名ですが、近年の研究により、口腔内、特に重度の小児う蝕患者から多く検出されることが明らかになってきていました。

その原因を解明すべく、今回の研究では、ビフィズス菌を代表的なう蝕関連細菌であるストレプトコッカス・ミュータンス菌と比較検討しました。

子どもの虫歯予防に見直しが必要か

研究の結果、ビフィズス菌は糖をエサに4:1の割合で酢酸と乳酸を産出し、代謝産物は酢酸が主体だとわかりました。一方、ミュータンス菌は主に乳酸を産生します。pHの低い酸性環境下では、酢酸のほうが歯の内部に浸透しやすいことが報告されています。つまり、ビフィズス菌のほうが、酸性の条件下では、より深い虫歯を誘発しやすい可能性が高くなると、研究グループは考察しています。

また、ビフィズス菌はブドウ糖(グルコース)よりも乳糖(ラクトース)をエサにしたほうが、糖代謝の効率を促進し、より多くの酸を産生することも明らかになりました。小児期は乳糖を多く含む母乳や牛乳をよく口にしていることから、乳児のう蝕予防法について、再考する必要がありそうです。

フッ素の虫歯予防効果にも影響

う蝕の予防法のひとつとして挙げられるフッ化物の利用についても、こんな報告があります。フッ化物の利点とされる、細菌の糖代謝に関わる代謝酵素の働きを阻害し、酸の排出を抑える働きについて、ビフィズス菌においては、酸産生を完全に抑えることができなかったというものです。

つまり、ビフィズス菌が関係した虫歯には、フッ素の効果が半減する可能性があると言えます。

まとめ

腸内細菌の善玉菌であるビフィズス菌は、多くの発酵乳製品に含まれています。これらを口にしてそのまま寝てしまうと、そのほとんどに砂糖も含まれることから、特に小児においては深刻な虫歯を引き起こす可能性も否定できません。

子どもを寝かしつけるのにこのような製品を使うのは、やめたほうが良さそうです。くれぐれも気を付けましょう。

中出 修
福井県出身。1985 年、北海道医療大学歯学部卒業。1993年、同大で博士号を取得後、講師に就任。 2003年、ロマリンダ大学歯学部卒業。歯科医勤務を経て2005年、タコマ近郊に開業。2006年10月にサウスセンターモール近くに移転。 パンパシフィック歯科医院 Panpacific Dentistry 411 Strander Blvd. Suite 207, Tukwila, WA 98188 ☎ 253-243-7748