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中高年の歯の変色はテトラサイクリン歯?

健康な歯でスマイルライフ

日本では北海道医療大学歯学部で博士号を取得。米国でもロマリンダ大学歯学部を卒業し、2005年にPAN-PACIFIC DENTISTRY(パンパシフィック歯科医院)を開業した中出修先生に、アメリカで生活する日本人へ向けて歯や口腔について、説明していただきます。

中高年の歯の変色はテトラサイクリン歯?

先日、前歯を中心に黄色から灰色の変色が見られる患者さんを診察しました。歯科医ならピンとくるテトラサイクリン歯、すなわちテトラサイクリンという抗生物質の副作用で歯が永久的に変色してしまったケースと思われました。このテトラサイクリン、歯科ではこの副作用のせいで実に有名な存在なのですが、悪い作用ばかりではありません。今回はテトラサイクリンと歯科との関わりについて書いていきたいと思います。

テトラサイクリン系抗生物質の副作用

テトラサイクリン系の抗生物質は、ニキビなどの皮膚、腸管系、呼吸器系、尿路系、生殖器系、リンパ系など、実にさまざまな臓器、組織の感染症に使われている抗生物質です。

テトラサイクリンは、妊婦や8歳未満の子どもへの投与は禁忌とされています。妊娠中の場合は、胎児の骨や乳歯に障害が出る場合があるからです。また、永久歯の形成期である出生直後から8歳頃までにテトラサイクリン系の抗生物質を投与された場合も永久歯の着色を起こすことがあるとされています。

テトラサイクリン系の抗生物質は、かつてはマイコプラズマ肺炎や百日咳の特効薬、また風邪薬のシロップとして用いられてきました。しかし、歯に変色を生じることが認められ、これらの治療にほとんど使われなくなっています。1970年代ごろにはよく使われていたため、テトラサイクリン歯は40代〜50代の方によく見られます。

テトラサイクリンは鉄や亜鉛、カルシウムと結合しやすいという性質があるため、形成中の歯に含まれるカルシウムと結び付き、象牙質やセメント質の中に沈着して着色が起こります。この着色は永久的で、着色の程度はテトラサイクリンの量、投与期間や投与時期によって軽度から重度までまちまちです。

テトラサイクリンの歯科での良い作用

歯科ではテトラサイクリンの副作用がまず思い浮かぶのですが、一方で好ましい作用もあります。今から30年ほど前、テトラサイクリンには、骨の吸収や破壊に関係する酵素である、コラゲナーゼやメタロプロテナーゼの働きを阻害するという作用があることがわかりました。歯槽骨を破壊する歯周病の予防や治療には極めて良い作用であり、歯周ポケットにミノマイシンなどのテトラサイクリン系の抗生物質の局所投与が広く使用されています。

テトラサイクリンにより変色した歯の治療

それでは、テトラサイクリンで変色した歯を審美的に改善するにはどのような方法があるのでしょう? 軽度であれば、歯のホワイトニングが効果的です。しかし、重度であれば、ホワイトニングよりもセラミックベニアクラウンなどで治療しないと改善されない場合もあります。また、ホワイトニング後にベニアクラウンを装着するのがベストなことも。歯科医と最善の方法を検討してみるといいでしょう。

中出 修
福井県出身。1985 年、北海道医療大学歯学部卒業。1993年、同大で博士号を取得後、講師に就任。 2003年、ロマリンダ大学歯学部卒業。歯科医勤務を経て2005年、タコマ近郊に開業。2006年10月にサウスセンターモール近くに移転。 パンパシフィック歯科医院 Panpacific Dentistry 411 Strander Blvd. Suite 207, Tukwila, WA 98188 ☎ 253-243-7748