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新型コロナウイルス感染を防ぐチューイングガム?〜健康な歯でスマイルライフ

健康な歯でスマイルライフ

日本では北海道医療大学歯学部で博士号を取得。米国でもロマリンダ大学歯学部を卒業し、2005年にPAN-PACIFIC DENTISTRY(パンパシフィック歯科医院)を開業した中出修先生に、アメリカで生活する日本人へ向けて歯や口腔について、説明していただきます。

新型コロナウイルス感染を防ぐチューイングガム?

ワクチンの普及により終息に向かっていると思われた新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ですが、変異ウイルスのオミクロン株の発生により、ワクチン接種完了者においてのブレイクスルー感染が相次いでいます。各国で感染者が急増するなど、また混沌とした状況になってきました。最近、ペンシルバニア大学を中心とした研究グループが、新型コロナウイルス感染を防ぐチューイングガムについて興味深い報告をし、注目を集めています(Molecular Therapy, https://doi.org/:10.1016/j.ymthe.2021.11.008.)。今回はこの研究を中心に書いていきたいと思います。

研究の背景

新型コロナウイルスのヒトへの侵入は、アンギオテンシン変換酵素2(Angiotensin-Converting Enzyme2/ACE2)という、ヒトの上気道粘膜の上皮細胞のレセプター(受容体)を介することが多いとされます。つまり、ウイルスはこのレセプターにくっ付くことにより細胞内に侵入できるようになるのです。このレセプターのブロックに成功すれば、ウイルスの侵入をかなり防ぐことができるはずです。

当然ながら、ACE2そのものが新型コロナウイルスがくっ付くのを妨害し、感染を防ぐ可能性も高いわけです。COVID-19患者においては、ACE2の活性が低くなっており、治療のひとつとしてACE2の注射も行われています。

今回の研究では、植物に遺伝子操作で作らせたACE2をチューイングガムに練り込むことにしました。そして、そのチューイングガムをかむことで唾液中の新型コロナウイルスが減少するか、感染防御に効果があるのかを、試験管実験を通して調べています。

実験の方法と結果

まず、唾液の採取が行われました。新型コロナウイルスに感染し、入院した陽性患者の唾液と鼻咽頭の粘膜をぬぐったもの(Swabs)が使われ、同時に新型コロナウイルス陰性者のサンプルも採取されました。

チューイングガムに練り込まれた植物由来のACE2は、フラウンホーファーUSA社およびエアロファームズで遺伝子操作された大量のレタスから、ACE2を含んだタンパク質を分離させ、凍結乾燥により濃縮したものを使用しています。

その気になる結果ですが、ACE2入り (17.2mg/g)のチューイングガムをかんだ後の陽性患者の唾液は、事前に採取した陽性患者の唾液と比較して唾液中の新型コロナウイルス量が激減し、ウイルスあるいはウイルス粒子が上皮細胞内に入るのを防げたことがわかりました。

論文の著者らは、植物由来のACE2は比較的安価で大量に作ることができ、唾液中の新型コロナウイルスの感染力を弱め、ウイルスの細胞内への侵入を防止することも可能であるとしています。COVID-19を防ぐ手軽な方法として極めて有望であると考え、今後は本格的な治験を準備する意向のようです。

まとめ

このチューイングガムの実用化が進めば、外食やイベント参加、歯科治療の前などに、マスク着用と並んで推奨されることもあるかもしれませんね。1日も早く、パンデミックが終わって欲しいものです。

福井県出身。1985 年、北海道医療大学歯学部卒業。1993年、同大で博士号を取得後、講師に就任。 2003年、ロマリンダ大学歯学部卒業。歯科医勤務を経て2005年、タコマ近郊に開業。2006年10月にサウスセンターモール近くに移転。 パンパシフィック歯科医院 Panpacific Dentistry 411 Strander Blvd. Suite 207, Tukwila, WA 98188 ☎ 253-243-7748