健康な歯でスマイルライフ
日本では北海道医療大学歯学部で博士号を取得。米国でもロマリンダ大学歯学部を卒業し、2005年にPAN-PACIFIC DENTISTRY(パンパシフィック歯科医院)を開業した中出修先生に、アメリカで生活する日本人へ向けて歯や口腔について、説明していただきます。
子どもの幼弱な永久歯がルートキャナルにならないように
歯科臨床に従事していて思うのは、永久歯が生えて数年以内のルートキャナルは、なるべく避けるべきだということです。ルートキャナルとは、歯の神経治療・根管治療のことで、生えてから間もない時期に行われた場合、歯の寿命にも関わります。
ルートキャナルになる原因
ルートキャナルになってしまう最大の原因は、やはり虫歯です。それも歯の中心部にある歯髄(いわゆる歯の神経と呼ばれる部分)に達する深い虫歯になればなるほど、ルートキャナルになる確率は高いと言えます。
その次に多いのが、歯の外傷によるものです。これは上顎の前歯が代表的な例で、歯髄部分まで達して歯が折れた場合や、歯は折れないけれども歯がグラグラになるほどの強い力が加わった場合に、歯の神経が死んでしまうことがあります。
そのほか、若い人ではほぼ見られないのですが、重度の歯周病も考えられます。歯周ポケットが極端に深い場合は、歯周ポケットから歯髄に細菌感染が及び、ルートキャナルになるケースが増えます。
永久歯は生えてからも変化し続ける
永久歯は、生えてしばらくは歯根が完成していません。歯髄は、歯根の先端部でも大きく開いた状態になっています。歯髄は時間の経過と共に小さくなり、歯根の先端部分も狭く閉じていくのですが、歯根にその狭窄部が出来上がるのは、生えてから数年以内とされています。歯根が完成後、歯髄はその容積を徐々に減らしていき、象牙質という硬い組織を増やします。
また、歯自体が、外側からも内側からも唾液、血などから、カルシウム、リン、フッ素などを取り込んで、結晶構造を密にします。このようにして、より強い歯になっていくのです。これを歯の成熟化と呼びます。
永久歯が未完成のうちにルートキャナルになるとどうなる?
●ルートキャナル自体の成功率が下がる
ルートキャナルでは、歯髄を取り除いて最後に密閉するという治療を行います。歯根に狭窄部がなく、歯髄が大きく開いている状態でのルートキャナルは、この密閉が難しいため、成功率が低くなる可能性があります。
●ルートキャナル後の歯根が折れやすい
歯髄がなくなった歯は栄養が得られなくなり、乾燥も進み、もろくなります。支柱(ポスト)を入れて歯を補強しても、早い時期に歯髄をなくした歯の歯根は、歯髄が大きかった分、厚みが十分にありません。人生の早い段階でそのような状態になってしまうと、その歯を長年使い続けるうちに、歯根が折れてしまう確率もおのずと上がることは容易に想像できるでしょう。
まとめ
永久歯が生えてすぐ、大きな虫歯などでルートキャナルになるようなことは避けたいものですね。子どもの歯を健康に保つためにも、乳歯が生えた時期から定期的に歯科医へ通い、口腔清掃指導を受け、フッ素塗布、シーラントなどの予防処置を続けることが大切と言えます。