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歯周病とアルツハイマー病

06-illust370 歯周病が高血圧、糖尿病、心筋梗塞、脳梗塞、肺炎、ある種のガン、未熟児出産などのリスクを高める可能性を、これまでもこのコラムで何度となく取り上げてきました。一方、高齢化社会を迎え、認知症の増加が社会問題となっていますが、最近では、認知症の半数以上を占めるアルツハイマー病を歯周病が悪化させる可能性を示唆する研究が増えてきました。今回は歯周病とアルツハイマー病の関係について書きたいと思います。
<2010年>アメリカ、ニューヨーク大学の研究グループは、デンマーク人男女152人を20年にわたって追跡調査した結果、70歳の時点で歯周病を罹患している場合、認知機能の低下と密接に関係していると報告。
<2013年>イギリスのセントラル・ランカシャー大学の研究チームは、アルツハイマー病を有する10人とアルツハイマー病を有しない10人の脳の検体を比較したところ、アルツハイマー病患者の脳の検体からは歯周病の有力な原因菌の一つであるポルフィロモナス・ジンジバリス(Porphyromonas gingivalis、以下、Pジンジバリス)が検出されたが、アルツハイマーを持たない人の脳からは検出されなかったと報告。脳への細菌の侵入経路の可能性には、血行を介するものと、歯の神経を介して脳へ感染する経路が考えられるとしている。
<2013年>日本の国立長寿医療研究センター、名古屋市立大学および愛知学院大学の研究グループは、アルツハイマー病モデルマウスにPジンジバリスを投与、感染させた実験的歯周炎モデルを作製して、行動変化および脳内の病態を非投与群と比較した。その結果、Pジンジバリス投与群では、歯槽骨の高度な吸収を伴った歯周病の発症を認め、なおかつ認知機能の低化を認めた。さらに脳内の海馬と皮質にアルツハイマー病の特徴であるベータアミロイドの沈着をより広範囲に大量に認めた。加えて脳内において、歯周病によって増えることが知られているサイトカイン、TNF-α、IL-1βが有意に増加し、歯周病がアルツハイマー病の悪化に関与している可能性を実験的に証明した。歯周病がアルツハイマー病を増悪させるメカニズムとしては、菌、サイトカイン、リポ多糖(LPS)などが口腔から血液を介して脳へ運ばれ、なんらかの影響を与えている可能性があると考察している。
歯周病とアルツハイマー病の関係は、まだ完全に証明された訳ではありませんが、関係を示唆する研究が確実に増えています。毎日の口腔清掃と定期的な歯科検診により健康な口腔状態を維持することが全身の健康に良いことは、間違いなさそうです。

[健康な歯でスマイルライフ]

中出 修
福井県出身。1985 年、北海道医療大学歯学部卒業。1993年、同大で博士号を取得後、講師に就任。 2003年、ロマリンダ大学歯学部卒業。歯科医勤務を経て2005年、タコマ近郊に開業。2006年10月にサウスセンターモール近くに移転。 パンパシフィック歯科医院 Panpacific Dentistry 411 Strander Blvd. Suite 207, Tukwila, WA 98188 ☎ 253-243-7748