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キシリトールは虫歯予防に有効的か?

これまで虫歯予防効果が期待できるとされ、チューインガム、歯磨き剤、キャンディ、お菓子などに広く使用されてきた甘味料、キシリトール(Xylitol)ですが、最近、英国のマンチェスター大学の研究グループが、これまでの論文を広範囲に検証した結果、キシリトールの虫歯予防効果に懐疑的な研究結果を発表し、ちょっとした話題になっています。このコラムでも以前、キシリトールの有効性について取り上げました。今回は、改めてキシリトールの虫歯予防効果について書いていきたいと思います。

キシリトールについて
ガムなどに含まれるキシリトールは、白樺などの木から工業的に作られることが多いのですが、一般的にキシリトールは自然界の果実、野菜などに幅広く含まれる糖アルコールです。例えばイチゴには、乾燥重量100gあたり約300mgのキシリトールが含まれています。人の体の中にも存在していて、肝臓のグルクロン酸回路で一日に15gほど産生されています。

考えられているキシリトールの虫歯予防効果
1. 虫歯の原因となる酸を発生しない
2. 砂糖と異なり、虫歯菌の足場となるネバネバした物質(プラーク)を生産しづらく、プラーク中の細菌の数を減らす
3. 甘味作用で唾液の分泌量を上昇させる
4. 抗虫歯作用があるといわれるフッ素の効果を相乗的に増加させる
5. 再石化促進作用があるかもしれない

今回のマンチェスター大学の研究
データベースから、キシリトールを含む製品が虫歯に及ぼす効果を評価した10件の試験結果(参加者合計6000人近く)を解析した結果、試験結果および研究に、信頼性に欠けるものが多いと判断されました。例えば、コスタリカの2件の試験(13歳以下の子ども約4200人が対象)で、キシリトール添加歯磨き粉は、添加していない歯磨き粉と比べると、3年間で虫歯が13%減少したという結果がありましたが、証拠の質は低いうえに普遍性に乏しく、この集団に限られた結果である可能性が考えられたと言います。
研究者たちは、ほかのキシリトール含有製品(チューインガムなど)では、キシリトールの恩恵を示す証拠がほとんどなかったのは驚きだったと述べています。ほかにもキシリトールには膨満感や下痢などの副作用が知られていますが、一部の研究では副作用があったにも関らず、それに関する報告が一切なかったといい、今後の研究では副作用について必ず報告すべきだと述べています。
理論的には、砂糖よりもはるかに虫歯発生の危険の少ないキシリトールです。しかし、今回の研究からも分かるように、現在のところ、虫歯予防効果に関しては過度の期待をすべきではなさそうです。キシリトールの虫歯予防における有効濃度は、10%以上とも言われわれているので、濃度的な問題があるのかもしれません。今後の研究を積み重ねていく必要がありそうです。

[健康な歯でスマイルライフ]

中出 修
福井県出身。1985 年、北海道医療大学歯学部卒業。1993年、同大で博士号を取得後、講師に就任。 2003年、ロマリンダ大学歯学部卒業。歯科医勤務を経て2005年、タコマ近郊に開業。2006年10月にサウスセンターモール近くに移転。 パンパシフィック歯科医院 Panpacific Dentistry 411 Strander Blvd. Suite 207, Tukwila, WA 98188 ☎ 253-243-7748