健康な歯でスマイルライフ
日本では北海道医療大学歯学部で博士号を取得。米国でもロマリンダ大学歯学部を卒業し、2005年にPAN-PACIFIC DENTISTRY(パンパシフィック歯科医院)を開業した中出修先生に、アメリカで生活する日本人へ向けて歯や口腔について、説明していただきます。
歯科とAI
2023年にちまたで注目された事象のひとつに、人工知能(AI)の普及があるのではないでしょうか。特に生成AIの「チャットGPT」は、質問に対する興味深い回答によって話題を集め、多くの企業で生成AIの開発競争が始まっています。
このブームは歯科にも影響し、歯科業務のサポートや効率化への寄与が期待されているところです。今回は、歯科の分野でのAI活用について紹介していきたいと思います。
AIの定義
まず、AIの定義について確認しておきましょう。人によって多少異なるものの、一般的な認識としては、「人間の知能を、コンピューターを用いて人工的に再現したもの」と言えます。そのうち生成AIは、AIが自ら答えを探して学習する「ディープ・ラーニング」をベースに構築され、比較的新しく生まれたAIモデルです。文章、楽曲、画像、動画など、クリエーティブな成果物を生み出すAIを指し、人間の仕事や作業をサポートするツールとして人気が高まっています。
歯科でのAI利用
歯科におけるデータのデジタル化と生成AIの出現により、歯科医療でのAI活用が現実化しつつあります。それに伴い、AIをテーマにした歯科の学術論文数も増えてきているようです。主な活用例としては以下が挙げられます。
バーチャル患者を用いた前臨床教育(実際に患者さんを診療する前段階の教育)にAIが有効利用されている。
歯科のレントゲン像、CTスキャン像、MRI像などの膨大なデータを元にAIが診断し、歯科医の最終診断を補助。
同じように病変組織像からAIが診断。歯科医の最終診断の補助として使われる。
患者の顔、人種、年齢等のデータを元に、クラウンや義歯の設計から作製までをAIが担う。
レントゲン像、CTスキャン像、3D歯型模型等から、AIが治療計画を策定。
食・生活習慣を分析し、将来の虫歯のリスクをAIで予測。
生成AIの正確性
生成AIの歯科における正解率に関する研究も出てきています(JADA154(11):970-974)。カナダと米国の研究グループが、チャットGPT 3.5、GPT 4を用いて、歯科教育での有用性を評価するため、各々の正解率を広範囲に調べました。その結果、チャットGPT 3.5では61.3%、GPT 4では76.9%でした。
まとめ
今後のAI技術の進歩は、歯科にとっても有益でしょう。歯科の研究および臨床でAIが正しく有効利用されていくことで、飛躍的な歯科の発展が望めるかもしれませんね。