日本とアメリカの医療保険システムが全く異なることは、皆さんもよくご存知だと思います。今回は開業歯科医の立場から見たアメリカの歯科保険の裏事情について書いていきたいと思います。
アメリカの歯科保険は、個人個人で異なる
日本では国民皆保険が浸透しており、歯科治療には国民健康保険でカバーされる部分と、カバーされない自費扱いの二通りしかありません。歯科医の立場からすると、診療報酬のクレーム先は国民健康保険の1カ所で基本的には大丈夫です。しかしアメリカでは、個人が勤務先などを通して加入している保険会社にクレームしなければいけません。さらに同じ保険会社であっても、各々で契約内容が異なるため、あらかじめ個人の契約内容を把握しておく必要があります。一年の限度額、どの治療にどのくらいの比率が保険でカバーされるか、あるいは治療をするにあたって生じる患者さんの一定額の負担分(免責)など詳細に契約されており、各々について調べなければなりません。請求すれば保険会社から契約内容が送られてくるのですが、不明瞭な点はその都度、さらに問い合わせて確認します。
保険会社によって支払いの判断は異なる?
車の保険でもそうでしょうが、あるクレームに対して、比較的すんなり保険で払ってくれる傾向のある会社とそうでない会社は確かに存在します。実際に歯科保険業務をしていると一目瞭然です。前は支払いが良かった会社が、社長が変わったらひどい対応になるということもあります。我々はアメリカ歯科医医師会(ADA)の治療コードを基準に保険会社にクレームするのですが、その保険会社で独自の基準を設け、支払いに応じないことも多いのです。
例えば、歯周病でADA コードに照らし合わせてディープ・クリーニングを計画し、患者さんに説明するとします。そして保険会社にクレームする訳ですが、保険会社によってはすんなり払ってくれません。さらなる情報(レントゲン、歯周ポケットのデータなど)を要求し、支払いを遅らせようとします。レントゲンを送ったのに送られてないとか、理不尽なことも多々あります。ひどい会社は科学的合理性を欠くような独自の判断基準を作って支払いを却下するのです。自分たちに有利な基準を作って査定し、支払いを拒むのですから、たまったものではありません。このようなことが色んな保険会社で個別に起きます。保険会社が支払わないと、負担はすべて患者さんの負担になります。そうすると患者さんの不満は多くの場合、保険会社でなく、歯科医院にぶつけられてきます。私たちも必死で何度も保険会社と交渉を何度も重ねて、保険で支払ってもらえように最善を尽くしています。このようにアメリカの歯科治療の舞台裏では、保険会社と歯科医院側の攻防が日夜繰り広げられているのです。
今回はアメリカにおける歯科保険の裏事情について触れてみました。少しでも参考になれば幸いですが、ちょっと愚痴っぽくなったかもしれません。失礼しました。
[健康な歯でスマイルライフ]