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歯科における笑気吸入鎮静法

<はじめに>

ある統計によれば、日常の出来事で恐怖に感じることの2番目にランクされるのが、歯科医院を訪れることだそうです(ちなみに1番は公の場でのスピーチです)。歯科で何に恐怖を感じるかについては、やはり痛みに対して、特に歯科の局所麻酔の注射に不安を感じる方が多いようです。

このような歯科の恐怖を和らげる方法として「笑気ガス」を用いた鎮静法があります。アメリカの歯科では3割以上の歯科医院でこの笑気吸入鎮静法(笑気濃度20 〜 30%、酸素70〜 80%)が使われているとの報告があります。中でも小児専門の歯科では、ほぼ全ての医院が常備しているのではないかと思います。しかし、日本では笑気ガスを使用する歯科医院はごくわずかです。日本人の我慢強い国民性のためではないかと想像しますが、コスト面も関係しているのかもしれません。

笑気は1772年に発見された気体ですが、医療に応用され始めたのはそれから100年以上後のことです。今回は、歯科で使われる笑気を用いた吸入鎮静法について解説します。

<笑気ガスの特徴>

無刺激、ほとんど無臭、透明、不燃性。重さは空気の1.5倍。

<歯科での笑気ガスのメリット>

  1. 不安や恐怖心を緩和し、より治療に協力的になる。
  2. 痛みの閾値を上げる(痛みを感じにくくする)。
  3. 高血圧、糖尿病、心疾患、歯科治療で失神した既往などのある患者さんのストレスを軽減し、いつでも酸素吸入可能な状態にあるので、治療の安全性が高まる。

<笑気吸入鎮静法の利点>

  1. 静脈注射の必要がない。
  2. 笑気濃度を下げ、酸素吸入により、迅速に鎮静状態から回復する。
  3. 治療後30分で運転して帰宅できるので、付き添いがいらない。
  4. 酸素を併用するので緊急時にも容易に対応できる。

<笑気吸入鎮静法の欠点>

  1. 鼻にマスクをするので上顎の前歯の治療がやや困難になる。
  2. 風邪などで鼻呼吸ができないと使用できない。
  3. 精神鎮静剤を静脈内投与して行う鎮静法よりも、鎮静効果の成功率がやや低い。

<まとめ>

笑気は全身麻酔にも使用可能な麻酔ガスの一種ですが、歯科で使用する笑気は濃度20~30%の低濃度で酸素と併用して使用するので安全で、意識を消失することはありません。つまり歯科治療をリラックスしてできるように笑気の助けを借りるというものです。恐怖心、不安感を抑制する効果が期待でき、歯科の麻酔の痛みも感じにくくなりますので、恐怖心の強い子どもでも容易に治療ができるようになることが多いです。笑気使用後も自分で車の運転が可能など、鎮静状態からの回復が迅速なのも特長と言えます。

[健康な歯でスマイルライフ]

中出 修
福井県出身。1985 年、北海道医療大学歯学部卒業。1993年、同大で博士号を取得後、講師に就任。 2003年、ロマリンダ大学歯学部卒業。歯科医勤務を経て2005年、タコマ近郊に開業。2006年10月にサウスセンターモール近くに移転。 パンパシフィック歯科医院 Panpacific Dentistry 411 Strander Blvd. Suite 207, Tukwila, WA 98188 ☎ 253-243-7748