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上顎の歯の治療は注射なしの時代は来るか?

最近のペンシルバニア大学、エリオット・ハーシュ(Dr. Elliot Hersh)教授らの研究グループが、臨床トライアル(Phase III)において上顎の大部分(小臼歯~前歯)の歯科麻酔を注射なしの鼻のスプレーで行い、一定の成果を挙げたという論文発表をしました(J Am Dent Association)。開発された麻酔薬はFDA(アメリカ食品医薬品局)から今年の6月に承認を得たということです。歯科治療に対して恐怖心を抱く方には朗報と言える研究ですので、今回はこの研究について書きたいと思います。

研究の概要

製品名:

Kovanaze( 成分:局所麻酔薬テトラカイン+鼻づまり防止薬オキシメタゾリン)

治験の内容:

治験対象者150名の成人(内訳:100名にKovanaze 、50名に偽薬を使用)鼻スプレー:1回目のスプレー後4分待ち、続けて2回目をして10分待ち、上顎の大臼歯以外の小臼歯、犬歯、前歯において歯を削ってみた。この段階で痛みがあった場合は、さらに3回目の鼻スプレーを行った。3回目の後も痛みがあった場合にのみ、通常の注射による局所麻酔を施し治療を行った。

結果:

Kovanaze を使用したグループにおいて88%の患者は、鼻スプレーのみでの治療が可能であった。

主な副作用:鼻水、鼻づまり、血圧上昇現時点でFDAは、使用できる患者の体重を88ポンド(約40㎏)以上としているが、今後は子どもにおける安全性、より麻酔が必要な術式にも可能かどうか研究を続けるとしている。なお、妊婦における胎児への安全性は、確立されていない。

まとめ

ある統計によれば、アメリカの成人の75%は、歯科治療に対して多かれ少なかれ何らかの恐怖心を感じているそうです。その恐怖心の一旦は、歯科医院での痛みの経験にあると言われています。しかも歯科麻酔は歯科治療の重要な部分を占めています。
患者さんで歯科医院での麻酔の注射を好きな方はあまり見かけませんが、実は、われわれ歯科医も患者さんに麻酔をするのはあまり好きではありません。麻酔をする時は、患者さんに痛みを感じさせないように細心の注意を払っているのです。そのため歯科医もかなり神経を使い、ストレスを感じます。患者さんに痛そうな態度や恐怖心が見られたりするとなおさらです。今回の研究は患者さんと歯科医、お互いが恩恵を得られる結果と考えられ、まだまだ多くの課題はあるものの、近い将来、歯科治療にいい変化をもたらす研究と言えそうです。

[健康な歯でスマイルライフ]

中出 修
福井県出身。1985 年、北海道医療大学歯学部卒業。1993年、同大で博士号を取得後、講師に就任。 2003年、ロマリンダ大学歯学部卒業。歯科医勤務を経て2005年、タコマ近郊に開業。2006年10月にサウスセンターモール近くに移転。 パンパシフィック歯科医院 Panpacific Dentistry 411 Strander Blvd. Suite 207, Tukwila, WA 98188 ☎ 253-243-7748