Home 美容・健康 健康な歯でスマイルライフ 予期せぬ歯の移動について

予期せぬ歯の移動について

歯は矯正力のような力を加えない限りは動かないと思っている方が多いですが、何もしなくても少しは動いています。歯を支える骨もダイナミックに代謝していて、造ると壊すを繰り返して一定ではありません。家に例えると、家の土台自体が動いているのです。歯の矯正後のリテーナー(保定装置)や部分入れ歯を1カ月もしていないと、もう入らなくなったり、入りにくくなるのは、歯が動いている証拠なのです。今回は、予期せず歯が移動するケースについて書いていきたいと思います。

1. 歯の矯正後の後戻り(Relapse)

歯に力をかけて移動して矯正が終わっても、歯の周囲の靭帯、繊維組織、筋肉、骨がしばらく落ち着いていない状態があります。落ち着くまでには一定の時間がかかり、動かした直後は矯正で伸び縮みした歯の周囲の靭帯や繊維組織などが元に戻ろうとします。歯の周囲の組織の力が働くために、動いた歯が元の位置に戻ろうとするのです。この歯の周囲の組織が安定するまで、一定の時間がかかります。従って矯正後の一定期間はリテーナー(保定装置)の装着が必要になります。その期間は矯正の治療内容や年齢などによって変わります。

2. 歯ぎしりによる歯の移動

臨床で患者さんを診させていただいていると頻繁に遭遇するのが、歯ぎしりによって歯が動いてしまうケースです。噛む際に歯の特定の部分だけが強くぶつかり、知覚過敏や痛みを引き起こすのです。原因としては歯ぎしりが左右均等でなく、特定の歯だけに力が加わっていることが考えられます。噛み合わせで外傷を引き起こしていますので、噛み合わせの調整が必要です。ナイトガードも必要ですが、場合によっては上下同時に作成して装着し、歯の移動を防止する必要があるでしょう。

3. 歯周病による歯の移動

歯周病が進行し、歯を支える靭帯や繊維組織が緩んでくると、ほんの小さな力でも歯が動いていきます。歯周病治療の他に歯のマイナーな矯正や固定、リテーナーの装着が必要になってきます。

4. 親知らずによる歯の移動

親知らずが横向きに埋まっていて手前の歯を押すような状態だと、さらに前方の歯の歯並びに影響を与えることがあります。このような場合は、埋まっている親知らずの抜歯やその後の矯正治療が必要になってきます。

5. 隣の歯の喪失による歯の移動

上下左右の歯がなくなると、近隣の歯は無くなった歯のスペースの方に移動する傾向にあります。インプラント、ブリッジ、部分入れ歯などの補綴(ほてつ)治療が必要になってきます。

今回は予期せぬ歯の移動を引き起こすケースを挙げてみました。この他にも指をくわえたり、舌で歯を押す癖(悪習癖)などがあると歯が動く原因になります。早めに歯科医に相談し、対処してもらいましょう。

[健康な歯でスマイルライフ]

中出 修
福井県出身。1985 年、北海道医療大学歯学部卒業。1993年、同大で博士号を取得後、講師に就任。 2003年、ロマリンダ大学歯学部卒業。歯科医勤務を経て2005年、タコマ近郊に開業。2006年10月にサウスセンターモール近くに移転。 パンパシフィック歯科医院 Panpacific Dentistry 411 Strander Blvd. Suite 207, Tukwila, WA 98188 ☎ 253-243-7748