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電子タバコと口腔の健康〜健康な歯でスマイルライフ第188回

健康な歯でスマイルライフ

日本では北海道医療大学歯学部で博士号を取得。米国でもロマリンダ大学歯学部を卒業し、2005年にPAN-PACIFIC DENTISTRY(パンパシフィック歯科医院)を開業した中出修先生に、アメリカで生活する日本人へ向けて歯や口腔について、説明していただきます。

電子タバコと口腔の健康

近年は、電子タバコ利用者が年々増えているようです。しかし、口腔の健康に及ぼす影響はタバコほどよくわかってはいません。今回は、電子タバコと口腔の健康について書いていきたいと思います。

喫煙と電子タバコの違い

そもそも喫煙とはどう違うのでしょうか。喫煙(Smoking)は、タバコの葉を乾燥・発酵などの工程を経て加工した物に火をつけ、くすぶるように燃焼させて発生する(不可視な)燃焼ガスと煙を吸引する行為です。一方、タバコの葉に火をつけないで加熱のみを行い、吸引するタイプは加熱式タバコと呼ばれ、喫煙と区別されています。

電 子 タ バ コ (Electronic cigarettes/E-cigarettes)は2006年から2009年にかけて増え出したニコチン製品で、タバコの葉を使用せず、装置内もしくは専用カートリッジ内のリキッドと呼ばれる液体を電気加熱させ、発生する蒸気(ベイパー)を味わいます。そのことから、電子タバコを使用することをベイピング(Vaping)とも言います。

アメリカにおいては一般的に、リキッドはニコチンを含み、プロピレングリコール、グリセリン(グリセロール)、水、香料からできています。ただし、日本国内で市販される電子タバコの場合、リキッドにニコチンは含まれません。現在、世界中で5,500万人以上の愛用者がおり、禁煙に役立つツールとしてFDA(米国食品医薬品局)から認可もされています

口腔の健康への影響

喫煙は口腔がんと歯周病のリスクを上げることがわかっており、このコラムでも何度か取り上げました。長期の喫煙は唾液の分泌減少を招き、口腔乾燥症を引き起こします。65歳以上に限ると、喫煙者は非喫煙者に比べて未処置の虫歯が2倍多く、現喫煙者の43%が全ての歯を失っているというデータもあります。

歴史が浅い電子タバコにおいても、気になる研究報告がすでに出ています。細胞培養では、口腔の細胞含めさまざまな細胞に毒性が認められること、また、電子タバコは口腔の細さいきんそう菌叢や炎症伝達物質を変える可能性があることが明らかになっています。

実際に、電子タバコで咳、口腔乾燥、喉や口腔粘膜がヒリヒリする症状などを訴える人は少なくありません。ただ、口腔粘膜細胞を観察した限りでは、タバコほど細胞のダメージが見られないようです。タバコから電子タバコに切り替えると、いくぶん歯周病の改善が認められるケースもあります。しかしながら、電子タバコの装置の爆発事故によるけがも報告されており、誤った装置の使用には注意が必要です。

まとめ

口腔の健康との関係は、長期に渡る影響を含め、まだ十分にわかっているとは言えません。現時点では、電子タバコは従来のタバコほどは悪くなく、タバコも電子タバコも吸ったことがない人よりは良くない、と考えるのが妥当と言えそうです。電子タバコは、タバコをやめるための手段としては有益である一方、手軽に利用できることから若い人たちに普及しやすく、健康リスクが高まることも懸念されています。

中出 修
福井県出身。1985 年、北海道医療大学歯学部卒業。1993年、同大で博士号を取得後、講師に就任。 2003年、ロマリンダ大学歯学部卒業。歯科医勤務を経て2005年、タコマ近郊に開業。2006年10月にサウスセンターモール近くに移転。 パンパシフィック歯科医院 Panpacific Dentistry 411 Strander Blvd. Suite 207, Tukwila, WA 98188 ☎ 253-243-7748