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虫歯が無くなる日は来るか?

小生が日本で歯学部の学生だった頃、レーザーや虫歯のワクチンなどの開発で、近い将来虫歯がなくなる日が来るかもしれないといった内容の講義を受けたことがあります。あれから30年以上経ちますが、いまだ虫歯は撲滅されていません。今回は2016年最後のコラムということもあり、原点に戻って虫歯の予防をテーマに書いていきたいと思います。

虫歯の成り立ちと予防

虫歯は、S.ミュータンス菌を主体とした口腔内のいわゆる「虫歯菌」と糖質を摂取することで発生します。 肉食動物は虫歯になりませんが、クマやゾウなどの果実を食べる動物には虫歯があることが分かっています。これは糖質が虫歯の発生に必須であることを意味しています。ペットにおいても犬や猫は虫歯にはほとんどならないのですが、人間の食べるものを与えることにより、ペットでも虫歯になり得ることが知られています。
簡単に言うと、S.ミュータンス菌が炭水化物と糖質を分解して、乳酸などの酸とネバネバした多糖類(バイオフィルムあるいはプラーク)を産生します。ネバネバした物質が虫歯の発生に重要です。この物質をつくり出す能力があることから、S.ミュータンス菌が虫歯の原因菌の中でもっとも大きい要因とされています。その他の要因としては歯質の強度、唾液の量や質が挙げられます。

A. 虫歯菌に対するアプローチ

  1. 口腔清掃:歯の表面のネバネバしたプラークを取り除くことが重要です。主にブラッシング、フロス、歯間ブラシの使用により機械的に取り除くことが必要です。夜寝る前の口腔清掃は特に大切です。
  2. マウスウオッシュ:抗菌成分およびフッ素入りのものが望ましいです。
  3. プロバイオテイック:善玉菌を積極的に取り入れ、虫歯の原因菌を少なくするものです。ヨーグルトの摂取、善玉菌入りのトローチなど市販されているものもあります。
  4. ワクチン:S. ミュータンス菌に対するワクチンも昔から研究されています。間もなく普及するというニュースがこれまで何度もあったのですが、まだ人体での応用には至っていません。早期の実現が望まれます。

B.炭水化物や糖質の摂取:量、回数、質など、食習慣の検討が必要

C.歯質の向上:歯磨き剤、マウスウォッシュ、 飲料水、錠剤などでフッ素の活用

私たち自身が虫歯予防の意識をしっかり持って日々努力すれば、虫歯の大部分は防げるはずです。それでも虫歯がなくならないのは、甘いものの摂取を抑えて日々のブラッシングやフロッシングに励むのが、どれだけ難しいかを意味しています。また歯科医院での定期的なチェックを受け、アドバイスを聞くことも重要です。

虫歯のワクチンは動物実験では成功しているようですが、最終段階で足踏み状態が続いています。さて虫歯の克服はいつになるのでしょう? まだまだ当分は、毎日の地道な自己管理が虫歯予防には必須のようです。

[健康な歯でスマイルライフ]

中出 修
福井県出身。1985 年、北海道医療大学歯学部卒業。1993年、同大で博士号を取得後、講師に就任。 2003年、ロマリンダ大学歯学部卒業。歯科医勤務を経て2005年、タコマ近郊に開業。2006年10月にサウスセンターモール近くに移転。 パンパシフィック歯科医院 Panpacific Dentistry 411 Strander Blvd. Suite 207, Tukwila, WA 98188 ☎ 253-243-7748