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ティーンエイジャーの聴力問題

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今回はティーンエイジャーの話をしよう。
以前本欄で、周囲からのアテンションが欲しいために、小3から小6ぐらいまでの子どもたちが聴力検査で難聴のふりをすることについて話したことがある。真偽を知るには、その子が部屋を出た直後、聞こえる程度の小さな声で後ろから呼びとめ、振り返ったら何かを尋ねてみる。難聴のフリをしている子はすぐに振り向いて答えてくれる。その時、振り向かないようであれば本当の難聴かもしれないと書いたが、ティーンエイジャーにはこの方法は使えないかもしれない。
思春期真っただ中の彼らは、親に反抗して聞こえないフリをして返事をしなかったり、無視したりを繰り返す。以前は友人がたくさんいて一緒に遊んでいたのに、最近は1人だったり少人数で部屋に閉じこもっていることが多くなったり内向的になってきたりすると、ほとんどの親は、反抗期や夜更かしで集中力が欠けていることが原因だろうと考えて、聴力と関係があるとは思いもしない。そのため聴力問題への対応が遅れ、人との付き合いや学業成績に支障を来たすこともある。
聴力問題は年配の方だけの問題と思ったら大間違い。アメリカでは、少なくとも5人に1人のティーンエイジャーが軽い聴力障害を持っており、20人に1人のティーンエイジャーはもっと重度の聴力問題を持っている。WHO(世界保健機構) によると、スマートフォンやパーソナルオーディオ機器で音楽を聴くことにより、世界中で10億人ものティーンエイジャーと若年成人たちが聴力損失の危機に晒されているそうだ。音が原因の聴力低下のほとんどは、現在の医療では元に戻すことができないため、失くしたら終わりだということをご理解いただきたい。
今の時代、ティーンエイジャーは、どんな場所でも、音楽を好きなだけ希望する音量で楽しむことができる。映画の上映中は大音量の効果音が浴びせられ、スポーツ観戦の歓声は隣の人と会話もできないほどのレベルに達し、コンサート直後は頭の中で超高音の耳鳴りが鳴り響いている。ヘッドフォンから音が漏れるほどの大音量で音楽を楽しむ人も少なくない。
ティーンエイジャーの聴力問題で一番やっかいなのは、本人に聴力障害の自覚がないことだ。人がたくさん集まるようなところを避けたり、電話を避けてテキストだけにしたり、1人でいることを好むようになったり、それが聴力に関係しているとは思っていない。そのため、親も気付かず、数年経ってから大学の授業が聞きづらかったり、仕事中に聞き間違いによる失敗があったりして初めて、聴力の検査を受けてみようということになる。
「ひょっとして、うちの子が?」と思い当たることが少しでもあれば、夏休みの間にお子様の聴力をチェックしてみてはいかがだろうか?

==== お知らせ ====

8月中、高校生までの子どもを対象に聴力検査を行います。
無保険、あるいは旅行保険の方は、初診料と聴力検査合わせて$60です。その他、詳細は下記まで。

[耳にいい話]

真宮 杏奈
ワシントン州と米国認定のオーディオロジスト。ワシントン大学で Speech and Hearing Sciences: Communication Disorders で学士号、Doctor of Audiology プログラムで聴覚博士号を取得。2012年にPAC Audiology クリニック オーディオロジスト(耳の専門医) を開業。 PAC Audiology クリニック オーディオロジスト(耳の専門医) 1605 S. Washington St. Suite 6, Seattle, WA 1370 116th Ave. NE, Suite 201, Bellevue, WA ☎ 425-455-0526