がん患者だけでなく、悩める人たちの心身の健康をサポート。現在のアメリカの医療環境で今、私たちができることを探ります。
さまざまながん患者さんを
サポートする新プログラム
ソイソース読者の皆さん、初めまして。在米日本人、日系人の健康と医療を支えるコミュニティー「FLAT・ふらっと」で、がん患者さんとサバイバーさんのための無料サポートミーティングをお手伝いしている、ほまりきょうこです。この4月より、性別・年齢に関係なく、乳がんと婦人科がん以外の「その他のがん」(大腸、胃、肺など)を経験した方を対象とする無料サポートミーティングも月に1回、オンラインでスタート。私はそのファシリテーターを務めています。参加する方々が治療での心配事や困り事ほか、逆にためになったこと、うれしかったことなど、それぞれの経験や気持ちを分かち合えるよう、サポートしていけたらと思います。
私自身、がん経験者で、検査、告知から治療までの全てをアメリカで受けています。それまでずっと健康だったにもかかわらず、立て続けに甲状腺がん、乳がん、大腸がん(転移がんではない)にかかり、受診の際は毎回、担当医に「Perfect, healthy cancer patient!(完璧で健康な、がん患者だね!)」と、笑顔で言われています。子育てと仕事に追われながら治療をしていた時には、日本語でのサポートプログラムにずいぶん助けられました。 どのがんにしても、告知を受けるのはつらいもの。そのショックを引きずりつつ、自分の病気についてまだ何もわからないままでも、治療内容を選んで決断をしていかなければなりません。ほとんどの医師は、こちらから質問をしなければ基本的なことしか説明せず、初めのうちは何を質問して良いのかすら、わからないという人がほとんどでしょう。
3度のがん経験を通して学んだのは、「ひとつとして同じがんはない」ということ。同じ名前、同じステージでも、ひとりひとり、がんができる場所も、その範囲や状態も違います。検査結果や医師との会話から、自分自身の唯一無二のがんについて理解していくことが求められます。最適な治療を選択していくのは、自分にしかできないことなのです。
一方で、確かな情報や経験者の話から、正しい知識を増やしていく難しさも感じます。ネット上にはたくさんの情報が飛び交うものの、医師、専門家、がん経験者から学べば学ぶほど、間違った情報の多さと危険性に気付くことになります。当団体のブロディー愛子代表を始め、専門家や多くのがん仲間との交流がなければ、果たして元気と自信を持って自分の治療を進められていたかどうかもわかりません。
新しく「その他のがん」プログラムを開始するに至ったのは、そうした自分の経験があったから。たとえば、乳がんだと、患者サポートミーティングやヨガ・クラスなど比較的多くのプログラムを見つけられますが、その他のがんになると一転、ほとんど提供されない現実があります。大腸がんのサポートグループにしても、全米規模の信頼できる団体の中にたった1件という具合です。
国立がん研究センターの統計データ(2019年)によると、日本人が一生のうちにがんと診断される確率は、男性66%、女性51%であり、がん罹患総数は、1位大腸、2位肺、3位胃、4位乳房。それがアメリカとなると、アメリカがん協会(ACS)の2019年までの5年間のデータでは、がんの発生率が1位乳房、2位前立腺、3位肺、4位大腸と順位が変わるということも、その他のがんのサポートが少ない理由のひとつかもしれません。
海外にいる私たちにとって、がんに限らずどんな病気であっても、身近に日本語で病気について話せる人がいるだけで大きな心の支えとなります。新プログラムでは、患者さんの個々の状況に応じて必要な時に寄り添い、情報や経験を共有したり心情を分かち合ったりしながら、最善の道を探れるよう支援していきます。多くの方を後押しできる場を作ることを目指していますので、このようなサポートを必要とする方はもちろん、今は病気でない方も、ぜひ活動に参加してもらえればと思います。ボランティア、寄付も受け付け中です。
今後は、医師、研究者、栄養士などの専門家をアドバイザーとしてミーティングに迎えたり、健康や医療に関するセミナーを企画したりと、さまざまな活動をしていく予定ですので、どうぞご期待ください。
ほまりきょうこ■在米、複数がんサバイバー。子育てと仕事をしながらの治療を経て、現在がん寛解中。2017年よりJapanese SHAREのサポートミーティングに参加し、ボランティア・ファシリテーターを務める。今年から「FLAT・ふらっと」の「その他のがん」部門を立ち上げ、活動中。