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乳がん検診で「要精密検査」と言われたら〜女性の命を守るヘルスケア

女性の命を守るヘルスケア Vol.25

アメリカ生活中に乳がん、卵巣がん、子宮がんを経験する患者の心に寄り添い、悩める女性たちをサポートするSHARE 日本語プログラムによる寄稿シリーズ。現在のアメリカの医療制度で今、日本人の私たちができることを探ります。

第25回 乳がん検診で「要精密検査」と言われたら

10月は乳がん月間です。今回は、乳がん検診で「要精密検査」と言われたときにどのような検査をするのかについて、Japanese SHAREで臨床アドバイザーを務める乳腺科医、田原梨絵が説明します。

乳がん検診で要精密検査になった方のうち、どれくらいの人が乳がんと診断されるかご存じですか? 知らせを受け取ってから、実際に検査を受け、最終的な結果がわかるまで、心配で落ち着かない日々を過ごす方がほとんどではないでしょうか。中には、「自分は絶対に乳がんだ」と思い込んで精密検査を受けに来る方もいます。

一般に検診のマンモグラフィーで要精密検査の通知を受け取るのは、1,000人のうちのおよそ50人です。そして、最終的に乳がんと診断されるのは約3人。つまり、検診でマンモグラフィーを受けた方で乳がんと診断されるのは約0.3%です。要精密検査となっても多くの方は「異常なし」または「良性」であり、乳がんと診断される割合は高くはありません。不安が大きいとは思いますが、結果を知るのが怖いからと放置せず、早めに医療機関で検査を受けることが大切です。

そもそも、精密検査ではどのような検査をするのでしょう? まず問診があり、視触診、マンモグラフィー、超音波検査、さらに医師の判断によって細胞診、組織診、MRIなどを行います。組織診で乳がんであることが確定すると、CTや骨シンチグラフィー、PET検査などで進行度を診断します。

問診

問診票での、月経の状況や出産・授乳の経験、がんにかかった家族の有無などの回答は、乳がんにかかりやすいかどうか、すなわち乳がんのリスクを判断するために必要な情報です。自覚症状がある方には、いつ気付いたか、気付いてからの変化、痛みを伴うかなど詳細も記入してもらい、診断の参考とします。

視触診

乳房の変形、乳頭の湿疹や分泌物がないかを観察します。また、乳房に直接触って、しこりの場所、大きさ、硬さ、しこりの境目がはっきりしているかどうか、よく動くかなど、しこりの状態を調べます。首や脇の下のリンパ節が腫れていないかどうかも、触れて確認します。 ●マンモグラフィー 精密検査時に乳がん検診での撮影画像を参照できない場合、あるいは診断するのに追加で必要な場合に、再度マンモグラフィーを行います。

超音波検査(エコー検査)

マンモグラフィーで要精密検査と判断された所見に該当する病変が、乳房内にあるかどうかを調べます。病変があった場合には、その形や境目部分の性状などで、良性なのか悪性なのかを推測します。日本では精密検査の際に乳房全体の超音波検査を行いますが、米国ではマンモグラフィーで要精密検査となった乳房の部位のみ、部分的に検査するのが一般的です。

細胞診および組織診(針生検)など

画像診断で良性か悪性かの区別がつかない病変や、がんを疑った場合に行います。乳房に細い針を刺して注射器で病変から細胞を吸い出して採取する細胞診や、局所麻酔下でやや太い針を刺して病変の一部を採取する組織診(針生検/バイオプシー)などが必要になります。これらの検査で採取した細胞や組織を病理医が観察し、良性か悪性か、どのような病気によるものかを判断します。通常、1、2週間で結果が出ますが、確定診断のための詳細を調べるのに数週間を要することもあります。

その他の画像診断

その他の画像診断として、MRI検査を実施します。造影剤という検査用の薬を用いて乳房の病変を詳しく調べます。乳がんと判明した場合に、その乳房内での広がりを確認する目的で行うことが多いのですが、診断が難しい場合などにもMRI検査で乳がんか否かを判断します。乳がんと診断された後、必要に応じて、CTや骨シンチグラフィー、PET検査などで乳房以外の部位への病変の広がり(転移)を調べ、進行度(病期)を分類します。


 

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田原梨絵■
Japanese SHARE臨床アドバイザー、一般社団法人BC Tube理事を務める、ボストン在住の乳腺科医、MD。ダナファーバーがん研究所研究助手、MDアンダーソンがんセンターのリサーチ・インターンを経験。


SHARE 日本語プログラム

ヘルプライン:☎347-220-1110(月~金6am~2pm)
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1976年にニューヨークでスタートした非営利団体のSHAREキャンサー・サポートが母体。同団体の正式日本語プログラムとして、アメリカで暮らす日本人、日系人の乳がん、卵巣がん、子宮体がん、子宮頸がん患者およびその家族の精神的不安を取り除くためのピアサポートと、米国医療事情を日本語で提供。

1976年にニューヨークでスタートした非営利団体のSHAREキャンサー・サポートが母体。同団体の正式日本語プログラムとして、アメリカで暮らす日本人、日系人の乳がん、卵巣がん、子宮がん患者およびその家族の精神的不安を取り除くためのピアサポートと、アメリカの最新医療事情を日本語で提供する。