シアトル駐在日誌
アメリカでの仕事や生活には、日本と違った苦労や喜び、発見が多いもの。日本からシアトルに駐在して働く人たちに、そんな日常や裏話をつづってもらうリレー連載。
ニチレイフーズ 干場浩孝(ほしばひろたか)さん
私が現在勤務しているのは、アメリカ人によるアメリカ人の好きな中華料理、いわゆる「アメリカン・チャイニーズ」の冷凍食品を長らく取り扱ってきたイノバジアン・クイジーン・エンタープライズ(INNOVASIAN CUISINE ENTERPRISES, INC)。時代の流れで消費者が本場の味を求めるようになってきたところで、2012 年に私の出向元であるニチレイフーズが資本参加しました。それからはオーセンティックなアジア料理、具体的にはフレッシュな野菜を使った手作りの春巻や、もっちりした皮の質感にこだわった点心などの開発と販売を行っています。
現在の主な仕事はふたつ。ひとつ目は商品作りから納品までのあらゆるコーディネートで、これがメインの業務です。アメリカ国内だけでなく、ときには日本やベトナムなど、提携しているどの工場で製造をするべきか。原材料はアメリカの安全基準に合わせたものになっているか。輸送費用なども含め、納品までのコストはどのくらいかかるのか。結果、いくらでその商品を販売すればよいのか。と、いうように、商品開発そのものを段取りするところから、実際に商品が世に出ていくまで、各分野の強力なスペシャリストと協力しながら、その全体像を管理・把握することが役割です。
ふたつ目の仕事は出向元との橋渡し役です。ニチレイフーズがこの会社の51%の資本を持っていますが、ここで実際に働いているのはアメリカ人の従業員です。彼らに気持ち良く仕事をしてもらうことが会社の成果につながるので、「日本ではこう」というスタイルを一方的に押し付けることのないように配慮しています。日本とアメリカを比べると時間軸の捉え方の違いは大きいです。日本ではギリギリのスケジュール感で日時までキッチリ詰めて、その実現に向けては残業も惜しみませんが、こちらでは大まかな週単位程度のスケジュールしか組まず余裕を持って臨み、残業をしてまで間に合わせようとはしません。そういった感覚の違いなどもあって、ときには両者の板挟みになることもあります。苦労することも多いのですが、究極的な目標は、この会社が日本からの駐在員なしでも日米双方にとってうまく機能する組織になってくれること。その日を楽しみに、ときにはイノバ ジアン・クイジーン・エンタープライズ側の代表として、ときにはニチレイフーズ側の代表として、正しいと思うことを信じて踏ん張るしかないですね。
日本に帰ったらまず吉野家の牛丼にたっぷりの生卵をかけて食べたい!あとサバやコハダなど新鮮な光モノの寿司も恋しいです。食べることが大好きでニチレイに入社しましたからね。その原点は今でも変わりません。アメリカ人がまだ知らない、もしかすると自分自身さえもまだ知らない、世界中のおいしいものを、時代の半歩先を行って紹介してみたい。そんなふうに思いながら、毎日の仕事を頑張っています。