シアトル駐在日誌
アメリカでの仕事や生活には、日本と違った苦労や喜び、発見が多いもの。日本からシアトルに駐在して働く人たちに、そんな日常や裏話をつづってもらうリレー連載。
住友林業アメリカ(SUMITOMO FORESTRY AMERICA, INC. )が米国内でパートナーシップ(持ち株制)を組む5社のうちのひとつ、メインビュー・ホームズ社の取締役として昨年5月、シアトルに着任しました。シアトルの前はダラス、その前はオーストラリアのメルボルンに駐在し、海外拠点では3カ所目になります。
シアトルでは年間およそ200棟を販売するメインビュー・ホームズ社の新築戸建住宅は、「アルフレスコ」と呼ばれる屋根付きの屋外リビングスペースが人気。狭い空間を有効に活用するためのデザインや、少ない建材で「コストの削減」と「見た目のスッキリ感」を両立させる技法など、日本の建築技術を取り入れていることも特徴です。
シアトルとダラスを行き来しながら社の全体像を把握し、親会社である住友林業に業務報告をすることが私の主な仕事です。今やシアトル近辺の住宅価格上昇率は毎年13パーセント程度にもなり、全米一。家族4人向けに3,000スクエアフィート(約85坪)の家をシアトルやベルビューで買おうとすれば、1億円超えもざらです。都市部では手頃な住宅購入が難しくなり、郊外で新規開拓せざるを得ない状況にあります。
しかし、これも見方を変えれば都市の発展につながります。私たちの会社は開発する地区の選定から、土地購入、家の建築、販売・引き渡しまでを一貫して行います。森林以外に何もなかったところに家が建ち、店や公園ができて人が集い、交通網も発達し、数年後には立派な”街“になる。この長いプロセスにとてもやりがいを感じます。
私は11歳の時、父の仕事の都合でアメリカに移住しており、ワシントン大学の出身です。人生の半分以上をアメリカで過ごしていても、もちろん日本語のほうが得意ですから、今でも英語で困ることは多々あります。日本人のアイデンティティーを持ちながらも、思春期に離れて暮らしていた分、日本への憧れは強く、それもあって大学卒業後は日本の住友林業に入社しました。成田支店に配属となった当時は設計担当でとても忙しく、終電で帰ることもしばしば。目標だった1級建築士の試験になかなか合格できずにいたのですが、メルボルン赴任時に勉強の時間を確保でき、無事に取得できました。
もはや生きがいでもあるゴルフは、家族の影響で高校生の時、本格的に始めました。日本に戻った頃は月に1度程度のラウンドでしたが、メルボルンでまた本腰を入れ始め、「自分の趣味に巻き込むこと」を目的に妻も誘いました。狙い通り妻もゴルフ好きになってくれたことは、本当にラッキーでした。シアトルではほぼ毎週末、夫婦でゴルフです。雨? 気にしませんよ! とは言え、妻と同じ組ではラウンドしません。つい、いろいろ気になることを言ってしまってケンカになるので……(笑)
やっぱり終の棲家は日本がいいですね。この仕事をしていますから、いつかは自分の家を設計し、建てることが夢です。時間が取れたら、日本国内、特に地方の街をのんびり旅行してみたいと思っています。