シアトル駐在日誌
アメリカでの仕事や生活には、日本と違った苦労や喜び、発見が多いもの。日本からシアトルに駐在して働く人たちに、そんな日常や裏話をつづってもらうリレー連載。
取材・文:磯野愛
#23 原田宏之
◾️神奈川県出身。趣味は登山で、今夏はワシントン州で2番目に高いマウント・アダムス登頂を果たした。駐在期間中に実現したい夢のひとつはもちろん、マウント・レーニアの制覇!
より自分にとって身近な商材を取り扱い、海外を相手に仕事ができる環境を求めて2009年に転職。築地に本社を構える東京シーフーズ(Tokyo Seafoods U.S.A., Inc. )に入社しました。全部で60名ほどの会社で、創業は1988年。マグロやサーモン、カズノコ、カニなど、水産原料に特化して輸入販売する水産部門と、外食レストランやスーパー向けなどに原料から加工品、メニューそのものまで、顧客のニーズに合わせて商品を提案する食材部門があり、私は後者の食材部門に配属されました。「シーフーズ」と名の付く会社ですが、食材部門では魚介のみならず肉類や乳製品、デザートなど食材全般を幅広く扱っていて、時には顧客が求める食材そのものを海外へ探しに行くこともあります。
ファミリーレストランのデニーズ始め、外食チェーンの担当となった私も、ニュージーランドのアイスクリーム、タイやベトナムのエビフライ、中国の工場で生産するかき揚げなど、さまざまな商品を海外から輸入していました。
イメージしていた通り、海外出張は年に4、5回あり、多忙ながらも充実した毎日。「そろそろマンションでも買おうかな。いつかは結婚もしたいしな……」などと考えていた矢先、寝耳に水のビックリ人事でシアトルへの赴任が決まりました。独り身での海外生活に不安はあったものの、小学生の頃に家族と訪れた初めての海外旅行先がシアトルだったこともあり、縁を感じました。こんなチャンスは一生に1度!と思って飛び込みましたが、やはり着任当時は日々の食事から洗濯機の使い方まで、まずは日常生活で苦労し、生き抜くだけで必死でした(笑)。
赴任先の東京シーフーズUSAは弊社唯一の海外拠点で、主にアラスカやカナダといった北米地域からの水産物の買い付けを担っています。東京本社からの要望に沿って、現地取り引き先との交渉や営業活動、輸出業務全般を行うのが主な仕事です。商品のひとつであるカズノコはアラスカやカナダで獲れたニシンを中国の工場へ運んで加工し、卵だけを日本に運んでいます。そのほか、シカゴの工場で製造するチーズケーキやサーモンの缶詰、銀ダラなどの底魚類なども取り扱っています。北はアラスカからカナダ、シアトル沖にかけての西海岸はサーモンの名産地ですが、特に旬の時期にアラスカから冷凍せずにフレッシュな状態で店頭に並んでいるものは本当においしいですよね。
英語には常に関心があり、留学や駐在の予定もなかったのに日本で1年間の英会話教室に通ったり(大して通うことなく終わってしまいましたが)英会話を練習するミートアップに参加したりもしていました。ところが、実際シアトルに来てからは、業務の半分は東京とのやり取りですし、こちらの取り引き先も日本向けの商売に慣れていて、日本語を話せる人もいます。日本語を使うことが予想以上に多く、自分から積極的に英語を使うよう意識しなければ、アメリカで暮らす=魔法のように英語を話せるようになる、というわけではないということを痛感しています。ESLのクラスに参加したり、コツコツ単語帳を作ったりしながら、地道に努力を重ねています。結局、こうやって身に付けていくしかないんですよね。
休日はなるべく外に出るようにしています。バーベキューや外に飲みに出るのも好きですが、中でも山登りが好きで、休日にはミートアップで知り合った仲間たちと登山に出かけています。こちらにいるうちにマウント・レーニア登頂をぜひ成し遂げたいと思っています。「パラダイス」など車で行けるところから実際の頂上まではまだかなりの距離がありますし、それなりの装備も必要です。また、アメリカに来て現地の友人たちといろいろな会話をしていくと、日本の地方都市やサブカルチャーの話題では自分よりも詳しいアメリカ人がたくさんいて驚きます。日本に戻ったら国内をじっくり回って、さまざまな角度から日本のことを深く学んでみたいですね。また仕事面では駐在中に、水産品に限らずアメリカの食材で、帰任後にもつながるような新たな日本向けの商売を仕かけていけるよう頑張っていきたいと思います。