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日立ヴァンタラ 伊東隆介さん

シアトル駐在日誌

アメリカでの仕事や生活には、日本と違った苦労や喜び、発見が多いもの。日本からシアトルに駐在して働く人たちに、そんな日常や裏話をつづってもらうリレー連載。

日立というと冷蔵庫や洗濯機といった家電メーカーのイメージがあるかもしれませんが、実際には社会インフラを担う、さまざまな事業を行っています。私が入社以来、エンジニア、そしてプロダクト・マネジャーとして、ずっと開発を担当してきたのは、大容量の情報を格納する「基幹系ストレージ」と呼ばれるITシステム製品です。日立のストレージは、鉄道や航空などの交通網や、電力といったインフラ関係、それに政府や銀行などで広く導入され、高いグローバル・シェアを誇ります。機密性の高い大量の情報を安全に保管し、さまざまな機能を伴って高速でデータを読み書きすることがその役割。日常生活の中で皆さんがこのストレージそのものを目にすることはほとんどありませんが、現代の社会では、ストレージなしで日々の暮らしを維持することはほぼ不可能です。

担当した現行製品基幹系ストレージG1500F1500

私が駐在する日立ヴァンタラは、日本の日立製作所が開発したストレージ製品を中心に海外販売する会社です。本社はカリフォルニア州シリコンバレーのサンタクララにあり、駐在先はそこになると予測していましたが、クラウドコンピューティングのメッカとして知られるシアトルに決まりました。日立ヴァンタラは開発部門も持ちます。私の仕事は、長く製品開発に携わってきたエンジニア経験を生かし、プロダクト・マネジャーとして、海外顧客ニーズをベースに製品戦略を立て、仕様の上流策定から製品リリース戦略までを管轄することです。日本との連携が欠かせない一方、ときにはアメリカ人若手社員のメンター的役割を担うこともあります。ベルビューにあるオフィスは日本と違い、環境も勤務体系も自由。電話会議や自宅勤務が当たり前で、どこにいても柔軟に業務を遂行できるツールが充実し、ワークライフバランスがより実現しやすくなっています。部や課といった組織の枠組みにとらわれ過ぎることなく、自分の目指すゴールに向かって横断的に仕事できる利点があります。

キッチン完備の快適なオフィスはひとりひとりのスペースが広く自由な発想を生み出すべく設計された開放的な造り別棟にはスポーツジムも

シアトルの魅力は産業のすそ野が広いところ。ここにはIT産業だけでなく、水産業や林業、航空産業など多くの業種がひしめき、とても興味深いです。生活面でも気に入っています。日本にいた頃は深夜残業や休日出勤ばかりだった自分が、信じられないことに、息子が通うシアトル日本語補習学校の行事やPTA活動、それに地域のイベントにも積極的に参加するようになりました。妻が9月に行われた補習学校の古本市で委員長を務めていたので、開催までその手伝いに明け暮れていました。地元の日系企業団体であるシアトル日本商工会にも入会し、日本から駐在で来ている異業種の素晴らしい方々と交流する機会にも恵まれています。

家族で出かけた3200キロ行程のロードトリップで立ち寄ったイエローストーン国立公園ローワー滝にて

近い将来、「ドアノブから発電所まで」と言われるように、身の回りの全てがインターネット接続されるIoTの時代がやって来ます。インターネットを介して集められた膨大な運用データを、AI(人工知能)が試行錯誤と分析を繰り返して物事を最適化していく、そんな未来が待っています。たとえば、「その道の匠が何十年もかけて身に付けてきた、容易に習得しにくい技術が誰にでも再現できるようになる」など。これまで必要とされた人間の「経験」や「勘」、「熟練の技」といった形のないものが、ITの力によって誰でも手に入れることができるようになります。そして、集める情報の質と量が多くなるほど、それを格納するストレージの役割と存在は、ますます大きくなっていきます。そんな未来の一端を担う仕事に携われていることに、誇りとやりがいを感じています。

伊東隆介■神奈川県出身。1995年株式会社日立製作所入社。2016年5月より日立ヴァンタラ Hitachi Vantara(旧Hitachi Data Systems)に出向、シアトル駐在となる。2002年にはスタンフォード大学への研究留学も経験した、バリバリの国際派プロダクト・マネジャー。