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日本人留学生の目にはどう映る? シアトルのIT業界で働くビジネス・パーソン

シアトルの日本人留学生が発信するビジネス情報サイト「Big Pic」。その主力コンテンツは、スタートアップを含めたシアトルの企業で働く人への突撃インタビュー記事です。その中から注目記事をピックアップし、取材を通じて感じたことを含めてレポートしてもらいました。

 

私たちは世界中のスタートアップ企業を調査して記事にするだけでなく、シアトル周辺の企業と実際にコンタクトを取り、インタビューをしています。現在、インタビュー記事は14本あり、大学生である私たちだからこそ書けるオリジナルの内容です。その中から、いくつかの例を紹介したいと思います。

 

┃ソラコム 日本発のスタートアップー

シアトルには現地のスタートアップはもちろんのこと、日系企業のスタートアップも存在します。日本発のグローバルなIoT(モノのインターネット)プラットフォームの構築を目指している、ソラコムもそのうちの1社。昨年8月にはKDDIに買収されてメディアをにぎわせました。ソラコム米国CEO、川本雄人さんはアマゾン・ウェブ・サービス(以下AWS)の元社員。クラウドでサーバーをシェアするAWSのビジネス・モデルを応用し、利用した分だけ支払いができる通信サービスを提供しています。クラウド上に実装したソフトウェアによって通信できるようにしているので、大手通信キャリアと専用回線を契約する必要がなく、需要に応じてキャパシティーの増減が可能になります。インタビューでは、早い段階から世界をマーケティングの対象としている点が印象に残りました。汎用的なサービスを提供することで世界を舞台にビジネスを展開でき、多くの果実を世界中の人々に届けることが可能になる。商品・サービスの汎用性や活用アイデアの重要性を改めて感じました。

ソラコムの米国CEO川本雄人さんとのインタビューでは日本発のスタートアップ企業が考える今後のグローバルな展開とシアトルについて話を聞いた

 

┃FINAO ー目標をシェアできるアプリ

スタートアップ企業を立ち上げる起業家の中には、誰もが知っている大企業を辞めて自分なりに人の役に立ちたいという方もいます。「FINAO」は、目標をみんなでシェアして励まし合えるアプリですが、作った方は元マイクロソフト社員。FINAOとは、「Failure Is Not An Option(失敗という選択肢はない)」の略で、失敗をどう捉えるかは自分次第だという考え方を持って欲しいと名付けたそう。子どもたちが自ら目標を設定し、その目標に向かって自ら動いていくように仕向けるようなプラットフォームを学校に提供しています。教育の面で、子どもたちが「Growth Mindset(自分の成長は経験や努力によって向上できるという考え)」を持ちながら育っていけるようサポートをしたい、という思いと、熱い情熱とパワーを感じました。自分が情熱を持てる仕事なら、どんなに大変でもわくわくしながらできるということを、実感させられました。

FINAOのCEOウォーレスグリーンさんからは社会に出る学生に向けたメッセージをもらった情熱的な彼の人生を表したような言葉だった

 

┃アマゾン ー新卒社員の華麗なる生活

私たちは現地のスタートアップ企業だけにフォーカスするのではなく、大企業にも積極的にインタビューを行っています。アマゾンに関する記事では、中国生まれ日本育ちで2017年入社のテンイチ・リュウさんにインタビューしました。本社はゲーム台やビール・サーバーなどがあり、日本ではあり得ないくらいラフな印象。同社のモットーである「Work Hard, Play Hard(よく働き、よく遊べ)」を体現していると感じました。テンイチさんには、日本の企業とアメリカの企業の違いについて聞くこともできました。給与や昇進、働き方など、実際に勤務するテンイチさんだからこその貴重な意見をもらえました。たとえば、昇格のスピードは日本とは比べものにならないくらい。日本のように残業もしないし、むしろ上司にちゃんと休んでいるか聞かれることもあるそう。アマゾンで働く魅力は、世界の第一線で世界を動かしているという実感があること、AIによる買い物など、未来のビジョンにわくわくさせてもらえることだと話してくれました。

アマゾン本社に勤務するテンイチリュウさんにインタビューした少し緊張する私たちを気遣い常に優しく答えてくれた

 

┃マイクロソフト ー22歳のITエリートが振り返る学生時代とは

また、シアトルに本社を構える大企業と言えば、マイクロソフトも外せません。インタビューをしたのは、弱冠22歳でマイクロソフト本社のカメラ部門でソフトエンジニアとして働く吉越 勁(よしこし けい)さん。本社ツアーのあとには、勁さんがなぜマイクロソフトに入社したのか、日本の大学生が社会人になる前に何をすれば良いのかを、勁さんの学生時代を振り返りながら語ってもらいました。勁さんは子どもの頃から海外生活が長く、小中高と多くの習い事、ボランティアをしていて、デューク大学時代も日本文化クラブを立ち上げたり、アカペラクラブに所属したりと、その多才ぶり、豊富な経験には舌を巻きます。就職前には超有名企業で何社もインターン。マイクロソフトも高給ですが、さらに高給のトレーダー職内定を蹴ってエンジニアの道に進んだのは、今後ありとあらゆる場所で必要とされる可能性を選んだから。そんなマイクロソフトに入社するまでの勁さんが歩んできた人生を事細かに知ることができました。

マイクロソフト本社に勤務する吉越 勁さんにインタビュー勁さんの同社そして日本への熱い思いがとても鮮明に伝わってきた

 

┃まとめ ー日本の大学生の安定志向に危機感

さまざまな会社にインタビューを行う中で感じることは、スタートアップを含め、シアトルの企業で働く人たちは、未来に向かってそれぞれに熱い思いを持ち、世界に大きな影響や変化をもたらそうと考えているということです。私たち自身、留学でシアトルに来てから、毎日たくさんの起業家や社会人の方から刺激を受けており、シアトルは自分たちが成長できる最高の場だと、改めて実感しています。

私たちの目標のひとつに、大学生の就職活動を変えていきたい、というものがあります。近年の大学生は安定やブランドを求めて、人気企業ランキング・トップに挙がる大手企業しか視野に入れていない、という現状があります。実際、「2017年卒マイナビ大学生就職意識調査」によると、大手企業志向は前年比5.5ポイント増の48.4%で半数に近く、企業選択のポイントは大手から連想される項目が増加。2001年卒以降、最も高い割合で安定志向となっています。起業したいと考えている学生はわずか0.4%でした。

このような結果もあり、将来の日本には少し危機感を持っています。もっと多くの大学生に、自分が情熱を持つ分野で革新的なことを生み出しているスタートアップ企業について、興味を持って欲しい。私たちはそんな思いで、このウェブサイトを運営しています。テクノロジーが発展しており、スタートアップも盛んになりつつあるシアトルに住んでいるという利点を最大限に生かし、ビジネスの最先端を肌で感じ、発信し続けたいと思います。

 

現在Big Picで活動する学生団体Rebornのメンバー左から三瓶清美創価大学本城ありさ立命館大学山下智也関西学院大学山中 苑大阪大学山田寛太立命館大学秋山智惟明治大学

Big Pic■シアトルに留学している日本人大学生が運営するウェブサイト。最先端のビジネス情報を日本語で世界中に届けている。「シアトル=スタートアップの集積地」という地の利を生かして、革新的なスタートアップ企業を紹介。また、シアトルにある企業へのインタビューや、シアトル発のIT情報サイト「GeekWire」の和訳記事も掲載している。大局観を持ち、次世代を担う人材を増やしていくことが目標。ウェブサイト