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神戸ビジネスセミナー

神戸ビジネスセミナー

ウォーターフロントにあるベルハーバー国際会議場で開催された神戸ビジネスセミナーには、シアトル周辺の企業関係者のほか、学生や姉妹都市関係者など100名余りが集まった。セミナーは在シアトル総領事の山田洋一郎(やまだ・よういちろう)氏、シアトル港港湾委員のジョン・クレイトン氏の挨拶で始まり、イーライリリー・アンド・カンパニー(イーライリリー社)のケビン・ヤマガ・カーン氏、500スタートアップスのガリア・モア氏、そして神戸市副市長の玉田敏郎(たまだ・としろう)氏による講演が続いた。

日本最大級の医療バイオテック産業クラスター

最初に登壇したのはイーライリリー社のケビン・ヤマガ・カーン氏。糖尿病の治療に用いられるインスリンを世界で初めて実用化したことで知られるイーライリリー社は、1965年から神戸にオフィスを構えている。大阪の塩野義製薬が1909年に同社製剤の取引を開始した頃から日本市場へ積極的に参入する同社は、1975年には日本イーライリリー株式会社を設立。神戸には日本法人本社、開発製造工場、教育センターを構える。2016年時点で210億ドルの売り上げを計上し、全世界で4万人以上の社員を抱える同社。「我が社にとって日本市場が最大の海外市場。アメリカに続く市場規模で、三番目のドイツ市場を大きく引き離しています」とヤマガ・カーン氏。「日本は安定した社会経済基盤がある上に、高齢化で医療市場が拡大していて魅力的な市場です。開発投資に見合った価格帯で販売できるのも魅力」と続けた。ヤマガ・カーン氏は、プレゼンテーションの中で過去10年間の日本国内市場売上の急速な伸びをグラフで示した後、これからも神戸におけるR&D投資を継続していく旨を伝えた。

ヤマガ・カーン氏によれば、日本最大の医療バイオテック産業クラスターがある神戸に、医療関連企業が拠点を置くメリットは大きいという。神戸ポートアイランド内にある先端医療センター(IBRI)、理化学研究所多細胞システム形成研究センター(CBD)、神戸臨床研究情報センター(TRI)など多くの研究施設について、そして神戸低侵襲がん医療センターなど先端医療を駆使する病院についても紹介。そうした研究機関や病院との連携、また神戸大学や京都大学など日本トップクラスの大学医学部との連携が、同社のR&Dを後押ししていることも強調した。神戸、大阪、京都を中心にする関西圏だけで、ロシアや韓国など一国に相当する医療産業市場があり、地域市場規模が大きいこともメリットの一つだという。

「アメリカなど日本国外から神戸へ転勤してきた社員は、ほとんどが赴任期間を延ばしたがるんです」とヤマガ・カーン氏。すばらしい生活環境に加えて、子どもを持つ家庭にとってはその教育環境も魅力だという。イーライリリー社が提携するインターナショナルスクールの「カネディアン・アカデミイ」は特に人気で、子女の同校卒業を見届けるために神戸滞在を延ばす家族も多いのだとか。

500KOBE スタートアップ支援

2016年夏に開催された500Kobeの様子2017年度は8月21日から開催女性9名を含20名の起業家が神戸に集まる

神戸市は、医療バイオテック産業の振興に加えて、近年はハイテク分野でのスタートアップ支援にも力を注いでいる。2015年から中高生への起業家キャリア教育や大学生シリコンバレー視察プログラムを開始。三宮に「神戸スタートアップオフィス」も開設。久元市長自らがシリコンバレーへ赴いて関係を築いた500スタートアップスとの連携で、2016年から「500KOBE」と称する毎年夏のシードアクセラレーション・プログラムを実施している。技術やアイディアを持つ起業家を集め、人脈紹介やメンタリングなどの研修を行った上で、500スタートアップスを含むベンチャー投資家へプレゼンテーションをする機会を提供するプログラムだ。500スタートアップスは50以上の国と地域で投資活動を行っているが、日本でのプログラムは「500KOBE」が初めてだ。

神戸市中心市街地の三宮にある神戸スタートアップオフィス

神戸ビジネスセミナーでも、500スタートアップスでアライアンス戦略を担当するガリア・モア氏が登壇。「昨年夏には200社以上の応募者から選ばれた20名の若い起業家が6週間にわたるプログラムに参加。最終日のプレゼンテーションでは相当な金額のベンチャー投資を受けることに成功しました」と、写真を交えてプログラムの内容を説明した。「500KOBE」に参加した起業家は、日本国外からも集まったという。「神戸にはスタートアップを後押しするエコシステムが出来上がっています」とモア氏。500スタートアップスのほかにも神戸市内には14のインキュベーターやシードアクセラレーターがあり、ベンチャー投資ファンドや個人投資家も複数あるという。行政の後押しも強い。例えば「KOBE Global Startup Gateway」と称するスタートアップコンテストに入賞すれば、市からの資金援助や一定期間の無料オフィスレンタルなどのサポートが受けられる仕組みがある。

神戸で先端ビジネスを

60周年記念式典とビジネスセミナーのために神戸からシアトルを訪れた玉田副市長

セミナー最後の講演として、神戸市副市長の玉田敏郎氏が神戸市のビジネス投資環境を説明した。イーライリリー社の神戸での成功や500スタートアップスとの連携に触れながら、「世界の企業・起業家を受け入れてサポートし、神戸の地で先端ビジネスを成功させてほしい」という神戸市の長期戦略が語られた。神戸でビジネス投資を始める企業に対しては、減税やオフィススペースの提供などの行政サポートがあるという。例えば、外国・外資系企業は約3カ月間無料でテンポラリーオフィスが利用できたり、神戸にオフィスを持つ場合はオフィス賃料の半額を最大年間約11万ドルまでの補助を行うなどの仕組みがある。固定資産税、都市計画税、事業所税の減税制度もある。

セミナーを終えた後、会議場のテラスで立食パーティーが行われた。乾杯は灘酒「福寿」。神戸市は「神戸灘の酒による乾杯を推進する条例」を2014年に制定している。立食パーティーで、取材に対して玉田氏は「神戸市とシアトル市はいろいろな点で似ている。港町の風景もそうだし、医療産業が集積している点でもそう」と話し、「今後もビジネス交流を活発に行って、シアトルの若い人たちに神戸を訪れてほしい」と伝えた。

神戸シアトルビジネスオフィスは、神戸市のサテライトオフィスとしてシアトル市ダウンタウンに所在している。神戸でのビジネス立ち上げやオフィス設立については、同オフィスが問い合わせを受け付けている。

インフォメーション
神戸シアトルビジネスオフィス
1001 Fourth Ave, Suite 4310, Seattle, Washington 98154 USA
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