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『How to Succeed in Business Without Really Trying』 (努力しないで出世する方法)

シアトルの5thアベニューシアターで2月4日、ブロードウェイミュージカルの『How to Succeed in Business Without Really Trying(努力しないで出世 する方法)』を鑑賞してきた。

resize0503-min タイトルがすべてを物語るように、テーマはビジネス・サクセスストーリー。主人公フィンチは冴えないビルの清掃員として過ごす日々だったが、ある日、一冊の本に出会い、その教訓を基に必要最低限の努力と持ち前の機転の良さでトントン拍子にキャリアの階段を登っていく……。

本作は1952年出版のシェパード・ミードによる同名の著書を基に制作されたもので、楽曲の作詞・作曲はフランク・レッサー、台本はエイブ・バロウ 他、1961年にブロードウェイ46丁目劇場で初演されたヒット作品だ。

開演30分前、会場の前にはドレスアップした観客の長蛇の列。ミュージカルを観る気分を盛り上げてくれる。メインゲートの重厚な扉を開けると、オリ エンタルな趣き漂う空間が出迎えてくれ、その豪華絢爛な内装と建築デザインに息をのんだ。

幕が上がると、作業着姿の主人公フィンチがビルの窓ふき用のクレーンに乗って降りてくるところから物語が始まる。序盤からアップテンポで賑やかな曲 が続き、一気に物語の中に引き込まれた。

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フィンチはいつも活発でやる気に満ち溢れている。恋人ローズマリーは、ハイヒールと口紅の似合うキャリアウーマン。2人の華麗な歌やダンスを通した 軽快なやりとりで、私はすっかり彼らの世界に浸りきってしまった。会社のオフィスにコーヒーがない時、社員たちで空っぽのカップを持って、地団駄を 踏むようなダンスを大きな音を響かせながら踊り出したり、エレベーターを待つ間に皆で踊ったり、好きな人への想いを込めて歌ったりと、日常のひと時 がミュージカルによって非日常化され、ひとつの芸術作品として成り立っていることがとても印象的だった。

物語の終盤では、出世街道まっしぐらだったフィンチに、一大事件が発生。はたしてこのピンチをくぐり抜ける事が出来るのか。最後まで目の離せない展開。カーテンコールでは観客が総立ちでその素晴らしいパフォーマンスに拍手を送った。本当にあっという間の2時間45分。生まれて初めてのミュージカル体験で、すっかりその魅力にとりつかれてしまった。

取材・文:瀬島咲希 写真提供:5thアベニューシアター