今や誰もが知る「SDGs(持続可能な開発目標)」。この目標の達成を目指して経営する企業が、世界にはたくさんあります。もしかしたら、あなたが実践者になる日が来るかも? 意外と知られていない、身近にあるSDGs経営を紹介します。
未来サミット:持続可能な未来への道
2025年を迎え、SDGsの期限まで残り5年となりました。しかしその進捗は十分とはいえず、気候変動に加えて、急速なデジタル化の進展による社会の変化などの新たな課題も浮上しています。こうした状況を踏まえ、2024年9月22日・23日にニューヨークの国連本部で「未来サミット(Summit of the Future)」が開催されました。このサミットは、従来のSDGsを進化させ、現代の課題に対応するための新たな国際的枠組みを提示する場として大きな注目を集めました。
サミット開催の背景
地球規模の課題がますます顕在化する一方、多国間主義への信頼が揺らぎ、国際協力の基盤が不安定になっています。国連憲章の理念を改めて確認し、未達成のSDGsを補完するとともに、AIやサイバーセキュリティーといった新たな領域にも対応する必要性が高まっていました。そこで、各国代表に加え、民間企業やNGO、地域コミュニティーなど多様なステークホルダーも参加し、多角的なアプローチを模索する場として開催されたのが今回のサミットです。本サミットでは現代の課題に対応し、国際社会の協力を強化するために、次の4つの目的が掲げられました。
1. 国連憲章の再確認:国際社会の基本ルールである国連憲章を現代に即した形で解釈し直し、国同士が協力する意義を再確認すること。
2. 多国間主義の再構築:気候変動や貧困、人権問題などの地球規模の課題に対応するため、国連をはじめとする国際機関への信頼を回復し、合意形成のしやすい仕組みを整えること。
3. SDGsの進化版への対応:2030年のSDGs達成に向けて、デジタル技術や社会の不平等といった新たな課題に対処するため、従来の目標を見直し、より効果的な対策を検討すること。
4. 現代の課題への対応:デジタル化の進展やジェンダー格差など、さまざまな分野で深刻化している課題に対し、具体的な行動計画を策定し、今後の国際社会が進むべき方向性を示すこと。
採択された成果文書「未来のための協定」
こうした議論を踏まえ、最終的に「未来のための協定(Pact for the Future)」が採択されました。この協定には、国際社会が協力して目指すべき目標と、その実現に向けた具体的な施策が盛り込まれています。
1. 持続可能な開発と資金調達:「グローバル連帯基金」や「グリーンボンド」などの新しい資金調達モデルを活用し、発展途上国のインフラ整備や技術開発を支える仕組みづくり
2. 平和と安全保障:紛争地域への人道支援や難民保護体制の強化を通じ、平和を持続するための施策の充実
3. 科学技術とイノベーション:AIや遠隔医療の恩恵を誰もが享受できるようになることと、それに伴う情報流出やサイバーセキュリティの課題に対処するルールづくりやガイドライン策定
4. 未来世代の権利保護:若者が政治や政策形成に参画しやすくなる制度の整備や、教育機会の拡大を図り、次世代が社会の持続可能性を高める主体となるための取り組みを強化すること
5. グローバルガバナンスの改革:国際機関の意思決定プロセスを見直し、女性や性的マイノリティーなど、多様な主体が議論に参加できる包摂的なガバナンスモデルへの移行
ひとりひとりの行動が未来を創る
この協定が実際に機能するかどうかは、国や企業だけでなく、私たちひとりひとりの主体的な行動にかかっています。たとえば、公園でゴミを見つけたら拾う、電気自動車などの再生可能エネルギーを利用するといった小さな行動の積み重ねが、環境保全や持続可能な街づくりにつながります。また、フェアトレード商品やグリーンボンドといった債権への投資を通じて、経済的・社会的・環境的に意義のあるプロジェクトを支援することも重要です。さらに、SNSやイベントを活用して情報を発信し、多くの人と問題意識を共有することも、大きな変化の波を生み出す一歩となるでしょう。

