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第37回 移民に関するニュース記事を訳してみよう〜技あり! 機械翻訳達人への道

機械翻訳の精度は飛躍的に向上。でも、よく読むと「あれれ?」な部分も。ちょっとしたコツで見違えるほど自然な日本語に直せる技を紹介します。

 

第37回 移民に関するニュース記事を訳してみよう


【今回の例文】

Advocates want work permits for all undocumented immigrants and DACA *applicants, not just migrants

Chicago Mayor Brandon Johnson met with community groups Thursday who are pushing to extend work permits to all undocumented immigrants, not just migrants.A letter from Mayor Johnson and other American mayors is expected to go to President Joe Biden to get movement on work permits for migrants in coming weeks. Johnson’s office said the letter has the support of some local organizations that want to see legal work options for new residents as well as undocumented residents who have been in the Chicago area for a long time.

(出典:2024年4月4日付ABC Chicago)

【機械翻訳】

移民だけでなく、すべての非正規移民とDACA申請者に労働許可を求める擁護者たち

ブランドン・ジョンソン・シカゴ市長は木曜日、移民だけでなく、すべての非正規移民に就労許可を拡大するよう働きかけている地域団体と会談。ジョンソン市長と他のアメリカの市長たちからの書簡は、数週間以内に移民の労働許可についての動きを得るために、ジョー・バイデン大統領に送られる予定。ジョンソン市長の事務所によると、この書簡は、シカゴ地域に長く住んでいる非正規滞在者だけでなく、新しい居住者にも合法的な就労の選択肢を望むいくつかの地元団体の支持を得ているとのこと。

(DeepL翻訳)

⬇︎

【修正後】

移住労働者だけでなく、すべての無登録移民とDACA申請者に労働許可を求める支援団体

シカゴのブランドン・ジョンソン市長は木曜日、移住労働者だけでなく、すべての無登録移民に対して就労許可が下りるように働きかけている地域団体と会談した。今後数週間のうちに、移民の労働許可に関する何らかのアクションを得るため、ジョンソン市長は他の市長と連名で、ジョー・バイデン大統領宛に書簡を送る予定。ジョンソン市長の事務所によると、この書簡は、シカゴ地域に新たに移住してきた外国人労働者だけでなく、長期にわたり居住している無登録滞在者にも合法的な就労の選択肢を与えるべきだと訴える地元団体の支持を得ているとのことだ。

*Deferred Action for Childhood Arrivalsの頭文字で、幼少期に親に連れられて米国に不法入国し、そのまま米国で育った若年層の移 民に対して強制退去処分を猶予する措置


シカゴの移民問題に関する記事です。難しい文章ではありませんが、背景知識が求められます。

今回のポイント

immigrantとmigrantの違いは?
どちらも「移民」と訳せますが、一つの文章で同一の訳語を当ててしまうと意味が重複し、文章が成立しません。通常、immigrantは「その国に永住する意思のある移住者」を指すのに対し、migrantは「就労目的で移住してきた短期労働者」を含みます。そのため、修正訳では、migrantを「移住労働者」と訳出しています。

不法移民とはもう呼ばない?
これまでillegal immigrant(不法移民)という語が一般的に使われていましたが、昨今では、undocumented immigrant(無登録移民)という語に置き換わりつつあります。移民を取り巻くアメリカの複雑な状況が反映されています。

③ 事実関係を確認しよう
最後の一文は、機械翻訳では一見正しく訳されていますが、実は誤訳です。この記事のテーマが、タイトルにあるとおり、「新規の移住者だけでなく、これまで法の保護から漏れてしまった、古くから(不法に)滞在している人たちにも就労許可を与えよう」とする動きであることがわかれば、as well asの前後の順番が逆だと気付きますね。

まとめ
アメリカと移民問題は切り離せません。特に今年は大統領選挙を控えているため、移民政策について耳にする機会も増えるのではないでしょうか。

シュレーゲル 京 希伊子
フリーランス翻訳家・通訳。外務省派遣員として、92年から95年まで在シアトル日本国総領事館に勤務。日本へ帰国後は、政党本部や米国大使館で外交政策の調査やスピーチ原稿の執筆を担当。キヤノン元社長の個人秘書、国連大学のプログラム・アシスタントなどを経て、フリーに転身。2014年からシアトルへ戻り、一人娘を育てながら、 ITや文芸、エンタメ系を始めとする幅広い分野の翻訳を手がける。主な共訳書は、金持ち父さんのアドバイザーシリーズ『資産はタックスフリーで作る』など。ワシントン州のほか、マサチューセッツ、ジョージア、ニューヨーク、インディアナ、フロリダにも居住経験があり、米国社会に精通。趣味はテニス、スキー、映画鑑賞、読書、料理。