Home ビジネス 機械翻訳達人への道 キティちゃん、50歳おめで...

キティちゃん、50歳おめでとう〜技あり! 機械翻訳達人への道

機械翻訳の精度は飛躍的に向上。でも、よく読むと「あれれ?」な部分も。ちょっとしたコツで見違えるほど自然な日本語に直せる技を紹介します。

第41回 キティちゃん、50歳おめでとう

【今回の例文】

Hello Kitty at 50.
How a drawing of a face made up of three circles, six lines, and blank space (oh, and a bow, too) came to rule the world.
There’s something about Hello Kitty. In pop culture years, the character is practically Paleolithic. She debuted during the Ford administration, on a vinyl change purse that retailed for less than a dollar. Sanrio, the company that created her, didn’t think enough of her earning potential at the time to even give her a name. The BBC has described her reductively as a “narrative-free trademarked drawing.” Yet as Hello Kitty turns 50 this year, her button nose, dots for eyes, and matching whiskers form one of the most recognizable faces on earth.
(出典:TIME誌ハローキティ生誕50周年記念号

【機械翻訳】

ハローキティ50周年
3つの円、6本の線、そして空白(それとリボンも)で描かれた顔が、どのようにして世界を征服するに至ったのか。
ハローキティには何かがある。ポップカルチャーの世界では、このキャラクターは実質的に旧石器時代の存在である。彼女はフォード政権時代に、1ドル未満で販売されていたビニールの小銭入れでデビューした。彼女を創り出したサンリオは、当時は彼女の収益性を十分に考えていなかったため、名前すら付けていませんでした。BBCは彼女を「物語のない商標登録された絵」と簡潔に表現しています。しかし、ハローキティが今年50周年を迎える中、彼女のボタン鼻、目玉の点々、それに合わせたひげは、地球上で最も認識できる顔のひとつとなっています。
(DeepL翻訳)

【修正後】

ハローキティが50歳に
3つの丸と6本の線、あとは余白だけ(そしてリボンも!)の顔が、いかにして世界中のハートを射止めたのか。
ハローキティには何か魅力がある。ポップカルチャー全盛の現代において、このキャラクターは実質的に旧石器時代の存在だ。ハローキティのデビューはフォード政権時代。1ドルもしないビニール製の小銭入れとして店頭に並んだ。ハローキティを世に送り出したサンリオは当初、ここまでのヒットを予想しておらず、名前すら付けなかった。BBCはかつて、ハローキティを「ストーリー展開のない商標キャラクター」と一言で評している。しかし、生誕50周年を迎えた今年、ボタン型の鼻、2つの黒丸、それらにマッチした6本のヒゲからなるハローキティの顔は、地球上で最もよく知られた顔のひとつなのである。

日本が誇る最強キャラクター、ハローキティの生誕50周年を記念して、TIME誌が特集を組みました。その冒頭部分を訳してみましょう。平易な文章ですが、翻訳する上で注意すべき点が多くあります。

今回のポイント✅

事のトーンにあった単語を選ぼう
“rule the world”を「世界を征服する」と訳すと、かわいいキティちゃんのイメージと合いません。修正訳では、少し意訳して「世界中のハートを射止めた」としました。

一歩踏み込んで訳そう
There’s something aboutは、「何か引き付けるものがある」という意味で、よく使われる表現です。記事の冒頭ですから、「何とも言えない魅力がある」というニュアンスをはっきり出しましょう。

単純な文章こそ細心の注意を払う
a vinyl change purse that retailed for less than a dollarは、「1ドル未満で販売されていたビニールの小銭入れ」と直訳すると、いかにも翻訳調です。修正訳のように「1ドルもしないビニール製の小銭入れとして店頭に並んだ」とすると自然ですね。

まとめ

今回取り上げたハローキティ特集号は、日本では未発売です。これだけでも、キティちゃんのグローバルな人気ぶりを物語っていますね。

シュレーゲル 京 希伊子
フリーランス翻訳家・通訳。外務省派遣員として、92年から95年まで在シアトル日本国総領事館に勤務。日本へ帰国後は、政党本部や米国大使館で外交政策の調査やスピーチ原稿の執筆を担当。キヤノン元社長の個人秘書、国連大学のプログラム・アシスタントなどを経て、フリーに転身。2014年からシアトルへ戻り、一人娘を育てながら、 ITや文芸、エンタメ系を始めとする幅広い分野の翻訳を手がける。主な共訳書は、金持ち父さんのアドバイザーシリーズ『資産はタックスフリーで作る』など。ワシントン州のほか、マサチューセッツ、ジョージア、ニューヨーク、インディアナ、フロリダにも居住経験があり、米国社会に精通。趣味はテニス、スキー、映画鑑賞、読書、料理。